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2020.11.08 11:00

「魚の価値」に革命を。神経〆のプロ長谷川大樹

「さかな人」代表 長谷川大樹氏

「さかな人」代表 長谷川大樹氏

東京から車で1時間あまり、長井漁港は、神奈川県横須賀市にあるこぢんまりとした漁港だ。併設の市場の片隅に、長さ8メートルはあるだろうか、他ではあまり見かけない、細長い巨大な箱があった。

中に入っているのは今朝4時に水揚げされた、旬のシロカジキだという。蓋はされているものの、隙間から突き出た腹びれがその大きさを物語る。今年の初物で、200キロ近い。競り落としたのは、全国の高級レストランに魚を卸す「さかな人」の代表、長谷川大樹氏。「このサイズは1年ぶりかな」と顔をほころばせる。



全国で水揚げされ、富山と高知など一部の地域では珍重されるものの、関東では安い値段しかついてこなかったカジキ。しかし、絶滅危惧種に認定された本マグロを出さずに、あえてそのカジキを使う高級寿司店も出てきている。

「未利用魚」とは


筆者が初めて長谷川氏と会ったのは、2017年に台湾のミシュラン2ツ星の日本料理店「祥雲龍吟」で開催された神経〆イベントだった。水産資源の減少が世界で問題となっている中で、神経〆という日本の技術を教えることで台湾の魚の質を向上させ、「量より質の漁業にシフトさせたい」という同レストランの稗田良平シェフの思いに賛同し、日本の神経〆のプロが集まり、長谷川氏はデモンストレーションを行なったのだ。

地元台湾のシェフなど料理関係者約200人が集まったイベントの効果は絶大で、翌年台湾の食の展示会を訪れると、地元の若い男性が神経〆の魚の卸問屋を設立するなど、影響が広がっていた。

本マグロやうなぎなど、これまで普通に日本人が食べてきた魚が絶滅危惧種に指定される中、今話題になっているのが「未利用魚」だ。いたみやすいなどの理由で一般的に流通してこなかった魚のことで、それを流通させることで、世界的な和食ブームで需要が拡大した絶滅危惧の魚を守る意味合いもある。

「そもそも、未利用魚って言葉が好きじゃない。『利用』って、人間の都合でしかない。命は平等なはずで、僕らは自然から魚を分けてもらっているだけ。人間が自然をコントロールしているわけではないのですから」と長谷川氏は言う。
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文・写真=仲山今日子

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