大阪のビジネス街の中心に位置し、地下鉄本町駅の真上とアクセスの良さも抜群だ。全室にバトラーがつき、ボタン一つで朝のコーヒーや靴磨き、服のアイロンなどのサービスが受けられる快適さは、忙しいビジネスシーンでのラグジュアリーステイにもぴったり。
痒いところに手が届くサービス、大阪のビル群を見下ろす眺望や大きなバスタブは、日常から抜け出した、オフの日の過ごし方としても魅力的。12階にあるロビーには、縁起の良い、二匹の龍を象ったという日本庭園があり、外に出ずとも気軽に散策が楽しめる。
今回は、今年10月に迎える10周年を前に、食という切り口で新しい要素が2つ加わったことに注目したい。
セント レジス ホテル 大阪
極上空間でいただく「きたうちプレミアムビーフ」
一つ目は、鉄板焼きの「和城」。開業当初は、イタリアンのメインダイニング「ラ ベデュータ」と、フレンチのビストロ「ル ドール」のみで、日本料理の店はなかった。そこで、今の時代にあった日本料理を、と考えて2018年11月に誕生した。
このホテルは、大阪城が徒歩圏内という立地と歴史的背景から、豊臣秀吉が栄華を極めた安土桃山時代をデザインコンセプトとしているが、それを、秀吉の下で活躍した千利休が生み出した侘茶の精神を体現する「和」、豪華さを好んだ武将、秀吉を表す「城」という、二つのコンセプトを体現した「茶室」で食事を楽しめる。
2つの茶室はテーマカラーも異なり、食器をはじめ、食前に提供される蜂蜜、食中・食後のお茶も、コンセプトに沿った異なったものが提供されるなど、こだわりが散りばめられている。
料理は共通で、石垣島の北内毅さんが長期肥育で育てた月に6頭しか出荷されない雌牛の肉、きたうちプレミアムビーフが常時楽しめるのが魅力だ。その上質な肉を満喫できるコースの流れを「肉懐石みたいだね」というお客様もいるそうだ。
鉄板焼き職人も惚れ込む、きたうちプレミアムビーフは、一般的に29カ月の肥育期間なのに対し、36カ月以上の長期肥育で、赤身にしっかりと旨味があり、優しい口溶けの脂が特徴。
和城の特徴は、肉が主役とは言え、お腹がいっぱいになっても翌日にもたれない軽やかなコース。その理由の一つは、油の使い方にある。肉を焼く時は、同じきたうちプレミアムビーフの脂身の部分から抽出した脂をごく少量使い、きめ細かく裏返すことで、表面を乾燥させず、肉から自然に出てくる脂で調理する。
素材をより素材らしく楽しむ、今の料理の流れにも合致した調理法だ。野菜もごく少量の米油でじっくりと焼き上げており、トロトロの丸ナスや、表面が綺麗な飴色になった甘い玉ねぎなども楽しめる。
鉄板焼きは油の量のコントロールがしやすい調理法で、素材の中の甘みや旨味、油分を生かすスタイルは、ヘルシー志向の方も嬉しく満足できるだろう。
大阪は、泉州野菜などを中心に、野菜の名産地でもあり、地元食材を使ったベジタリアン対応も可能だ。
また、これらの料理をさらに洗練されたものにするのが、東京のミシュラン2ツ星の「Narisawa」でペアリングを学んだ、ソムリエの宮田和典さんが織りなすドリンクペアリングだ。
冷菜から始まり、しゃぶしゃぶ、鉄板焼きと段々温度が上がっていくコースの流れに沿って、ドリンクの提供温度も合わせていく。例えば、日本酒の古酒を80度まで温め、ほうじ茶をインフューズした「くぐらせ酒茶」は、同じく凝縮した旨味と香ばしさを感じるガーリックライスに添えられ、油分が控えめでも、旨味と香りで味わいに豊かなボリュームが感じられる。
こだわりのワインや日本酒の香りを損なわないよう、ガーリックライスもその場でニンニクを炒めるのではなく、事前に素揚げしたみじん切りのニンニクを使うなど、五感で楽しむ、ワンランク上の料理体験になるような繊細な気配りがされているのも嬉しい所。