海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」

G20大阪サミットの首脳宣言にも織り込まれたIUU対策は新政権にも引き継がれるのか(Pool/Getty Images)

2020年の暑い夏が終わろうとしている。コロナ禍は衰えを見せず、東京オリンピック・パラリンピックは延期されたものの、開催の前途は多難である。学生はオンライン授業を余儀なくされ、誰もがニューノーマルに順応を試み、日本中で忍耐力が試されているかのようだ。

そんななかでも政治は動く。安倍晋三総理大臣が辞意を表明、第4次安倍内閣に自ら幕を下ろし、新たなリーダーが選出されようとしている。そして、その新総理を迎えての次の臨時国会で議論されるべく準備が進められているのが、「漁獲証明制度」の法制化である。

放置できないIUU漁業による水産物


「漁獲証明制度」とは、水産庁が2020年6月に取りまとめた案によれば、国内流通水産物、輸出水産物、輸入水産物それぞれの対象魚種において、漁獲物が合法的に獲られたことを示す「漁獲証明書」の提示を「法的に」求めるものである。これにより、資源管理の徹底、IUU(違法・無報告・無規制)漁業の撲滅、輸出の促進などが期待できる。管理漁業への大転換の要となるはずの法案である。

安倍総理の強いリーダーシップによる官邸主導の規制改革で、「昭和の膠着」に数々の鋭いメスが入れられたが、それは水産業界にも及んだ。

規制改革推進会議の議論から、2018年12月、実に70年ぶりに改正漁業法が成立し、霞が関では2020年12月の施行を目指した詳細設計が大詰めを迎えている。今回、新たに法制化を目指している漁獲証明制度は、その漁業改革の第二弾ともいえる、本丸である。

さて、今回の漁獲証明制度の法制化で期待されるIUU漁業の撲滅については、国連も注力しており、SDGs14(持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する)でも、その達成は2020年に目標を定めていた。

ところが2020年の後半となっても目標達成には程遠い現状を踏まえ、各国が本腰を入れ、国際協力の機運が活発化している。世界全体の漁獲量の13〜31%(重量ベース)が違法・無報告で漁獲されているという推計があり、IUU漁業での被害は甚大である。

世界の二大水産物輸入市場であるEUとアメリカでは、既に前者では10年前から漁獲証明を法制化し、後者でも2年前から水産物輸入監視制度を導入し、IUU漁業に由来する水産物の排除が制度化されている。

そして、その排除されたIUU漁業の水産物は、世界第3の水産物輸入市場(金額ベース)であり規制のない日本に大量に流れ込んでおり、日本が輸入する水産物の約3割がIUU由来とも言われているのだ。

プラごみ問題のように日常生活で目に見える問題ではないだけに、国民の理解を得るのはなかなか難しいが、これを放置しておけば日本の消費者は知らないうちに違法性のある魚を食べることで、「犯罪」に加担しているかもしれず、海外からも日本の責任を問う声が高まっている。

G20大阪宣言に織り込まれたIUU漁業の撲滅


こういった世界の流れも引き受けて、2020年3月、国際NGOなどにより構成される「IUU漁業対策フォーラム」が、「IUU水産物の輸入及び国内市場における流通の防止に関する共同提言」を発表し、山口英彰水産庁長官に手交した。

その後、内閣府規制改革推進会議にて、漁獲証明制度法制化の議論がなされ、6月に「漁獲証明制度に関する検討会」のとりまとめ資料が発表された。今回、水産庁が中心となって、多様なステークホルダーのさまざまな利益や立場の違いを超えて、漁獲証明制度の法制化をオールジャパンで取り組んでいく姿勢でとりまとめたことは、称賛に値する。

とはいえ、今後に課題も残る。漁獲証明の対象魚種と手法についてだ。

文=井植美奈子

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