感染リスクは「グラデーション」で考えるべき
坂本:感染予防のためには新型コロナの感染経路を断てばよいのですが、感染リスクが少ないところを過剰に気にする必要はありません。この意味で、新型コロナの感染リスクは「グラデーション」でイメージする必要があります。
例えば、何色でもよいのですが、濃い色から薄い色に徐々に変化するスケールを想像してみてください。おしゃべりなどで飛沫を飛ばすことは「ハイリスク(濃い色)」なので、マスクを着けるなどの努力で「ローリスク(薄い色)」に近づける必要がありますよね。一方、スマホを介した感染リスクは元々「濃い」わけではないので、気になるなら帰宅時に1度拭いてさらに「薄く」しておけば十分だというわけです。感染リスクを「濃い色」から「薄い色」に近づけるためには、何をどこまでやればよいのかを自分で考えて選択していく必要があります。
太刀川:感染リスクを「グラデーション」で捉えられたら、自分で感染対策の優先順位を取捨選択できるような気がします。テレビで毎日放送される感染者数の推移に一喜一憂するだけでなく、もっと具体的に自分の生活の中にどのような対策を取り入れれば効果的に感染リスクを下げることができるのかを、自分で判断していくことが重要ですね。
坂本:マスコミも政府も、これからは「感染リスクを下げるための行動を自分自身で判断する」のに役立つ情報発信をしていくことが必要だと感じています。感染経路を踏まえたうえで、どのような対策をどこまでやるかという、個々人の状況に合わせた判断の指針となるような情報が求められています。
太刀川:デザイナーの立場から考えると、グラフィックデザインを用いて感染対策の指針となる「原理原則」を理解しやすく伝えることは可能だと感じています。
坂本:あらゆる具体的な状況における行動の正解、不正解を丸暗記することは不可能なのでグラフィックで例とともに考え方を示すことは効果的だと言える部分はあるかもしれません。
感染リスクが少ないところを過剰に気にする必要はない。「グラデーション」で考えることが重要だ。
太刀川:例えば「飛沫感染!ストップ!」のようなグラフィックを世間に広めることは有効かもしれませんね。
坂本:そのように、原理原則をわかりやすく伝えていくことはとても大事だと思います。
今回は感染予防研究の専門家の立場から、新型コロナウイルス感染対策を取捨選択し、自分の生活の中に上手に取り入れていくための考え方について聞いた。次回は、感染対策として学ぶべき正しい消毒知識について話を聞く。
*記事内容は10月20日時点の情報に基づく。
連載:パンデミックから命をまもるために
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