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2020.10.12 17:30

新型コロナ感染は人の言動にも影響? トランプの行動との関連性は

Photo by Win McNamee/Getty Images

Photo by Win McNamee/Getty Images

その名を非常に広く知られている政治家の一人が最近、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した。その後、その政治家は以前にも増して、エキセントリックな行動を取っている。

そうした様子を目にした多くの批評家たち(医師を含む)は、この政治家の行動にSARS-CoV-2への感染が関連しているのではないかとの疑いを持っている。実際に、感染が神経症状を引き起こす可能性はあるのだろうか?──その可能性は、ある。

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の症状について、これまで最も注目されてきたのは、このウイルスが肺に与える損傷だ。呼吸困難に陥ることや、人工呼吸器が必要になること、肺に起きた問題が死亡につながることが指摘されてきた。肺の細胞に侵入したSARS-CoV-2は、爆発的な勢いで複製する力を持っている。

さらに、SARS-CoV-2は肺に深刻なダメージを与えるだけでなく、免疫系の過剰反応、いわゆる「サイトカインストーム」を引き起こす。感染した患者はこのウイルスそのものではなく、サイトカインストームによって死亡する場合もある。

だが、多くの患者の例において、SARS-CoV-2が肺以外のさまざまな臓器の組織にも侵入していたことが確認されている。その臓器には、脳も含まれている。

患者の8割に神経症状


米ノースウェスタン大学医学部は10月初め、シカゴの病院に入院した感染者509人を対象に実施した研究結果を発表した。それによると、Covid-19の患者の80%以上に、何らかの神経症状が出ていたという。80%とは、驚くほど高い割合だ。

脳への影響を示すものを含め、症状のほとんどは軽度だったという。また、患者の最も多くにみられた神経症状は、筋肉痛(44%)と頭痛(38%)だった(複数の症状を示した患者もいる)。

一方、単なる頭痛よりはるかに深刻な状態を引き起こす可能性がある脳症を起こしていた患者もいた(32%)。米国立衛生研究所(NIH)によると、脳症は「記憶喪失と認知機能の低下、微妙な性格の変化、集中力の低下、倦怠、意識消失」などを引き起こす恐れがある。

Covid-19が神経学的症状を引き起こすことを報告している研究結果は、ほかにもある。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは今年7月、43人の患者を対象に行った調査の結果、複数に神経学的問題が発生したと報告している。

確認された症状には、脳症(炎症は起きておらず、間接的に脳に障害が起きる、10人)、脳炎(脳や脊髄、髄膜に炎症、12人)、脳卒中(8人)などがあった。患者の一部については、せん妄(精神障害)や精神病の例も報告されている。

また、永続的な脳損傷につながる脳卒中を起こした患者もいた。SARS-CoV-2が脳に侵入すれば、深刻な健康問題や、憂慮すべき行動の変化が起きる恐れがあることは明らかだ。

現職の政治指導者の誰かに、こうした精神状態の変化が起きているのかどうかは明らかではない。SARS-CoV-2が脳に損傷を起こしているかどうかを直接的に調べるための検査方法はなく、現時点で可能なのは、患者の症状を観察し、それらを基に推論することだけだ。

ただし、現在までに入手可能となっている最良の科学的証拠は明らかに、Covid-19にかかった場合、神経学的問題が起きる恐れがあることを示している。

編集=木内涼子

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