コンリー医師の発表から間もなく、ホワイトハウスは大統領をウォルター・リード医療センターに搬送するとアナウンスした。
リジェネロンは、大統領の医師から同社の抗ウイルス抗体REGN-COV2の「コンパッショネート使用(compassionate use)」の申請を受けて、提供したことを認めた。同社によると、未承認薬のコンパッショネート使用は、稀な例外的措置としてケースバイケースで承認されるという。
リジェネロンは先週初め、新型コロナウイルスの抗体治療薬の臨床試験の最初のデータを発表し、この薬品を投与された患者の鼻腔内のウイルス量が減少し、症状を緩和できたと述べていた。大統領が摂取した8グラムの用量は直近の臨床試験の水準では高用量とされており、この薬品は体内でウイルスへの抗体を作らない患者に最も効果を発揮するという。
リジェネロンの治療薬はまだ実験段階のもので、FDA(米食品医薬品局)から緊急時の使用を承認されていないが、7月には政府が同社に4億5000万ドルを与えて製造を進め、この治療薬へのアクセスを確保する計画がアナウンスされていた。
リジェネロンの治療薬は2つの抗体で構成される「抗体カクテル」で、それらはヒトの免疫系を持つように遺伝子操作されたマウスと、新型コロナウイルス感染症から回復した患者の両方から数千の候補をスクリーニングした結果、同定されたものという。
これらの抗体カクテルのいずれかまたは両方が、SARS-CoV-2ウイルス上のスパイクタンパク質を標的とすることで、ウイルスが体内の健康な細胞に感染するのを防ぐことが期待されている。この薬は、リジェネロンが数年前から開発を始めたエボラ治療薬と類似したものとされる。
ここで特筆すべきは、大統領に投与された薬剤で治療を受けたのは、現時点で275人のみで、そのほとんどがトランプ大統領よりもかなり若く、入院していない患者だったということだ。入院患者の試験も進行中だが、そのデータはまだ開示されていない。
亜鉛やビタミンDも服用中
9月26日にこの薬剤の初期の臨床試験の結果が開示された際に、Scripps Research Translational InstituteのディレクターのEric Topolは「試験結果から悪い兆候は見られないが、今後どれほどの変革をもたらすかについては、現時点では多くを語れない」と述べていた。新型コロナウイルスの抗体治療薬の開発を進めているのはリジェネロンだけではない。イーライリリーやアストラゼネカ、ソレント・セラピューティクスなども新薬の開発を進めている。
主治医によるとトランプ大統領は新薬に加え、亜鉛やビタミンD、ファモチジン、メラトニンなどのほか、アスピリンを毎日服用しているという。消化性潰瘍の治療に用いられるファモチジンや、睡眠補助効果のあるメラトニンの投与は異例のことではない。亜鉛やビタミンDに新型コロナウイルス感染症を抑える効果があるとの仮説もあるが、その効果は証明されていない。
ただし、大統領の年齢と体重は、症状が重症化しかねない重大なリスク要因とされている。