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国際ジャーナリストのアメリカ深層メモ "Eye-opener"

入院先で健在ぶりをアピールするトランプ氏。写真には官邸による「情報操作」を指摘する声も(Getty Images)

10月2日、ドナルド・トランプ米大統領とメラニア夫人が新型コロナウイルスに感染していることが判明し、世界を震撼させた。トランプはこれまで、新型コロナの脅威を「軽視」し、公の場でもほとんどマスクも装着してこなかっただけに皮肉な展開だと言える。

11月3日の大統領選まで1カ月ほどに迫った10月に入り、選挙戦もラストスパートに向かっているなかでの感染発覚は選挙戦の行方に多大な影響を与える可能性がある。実は、米大統領選の歴史を振り返ると、10月には必ず選挙戦を左右するような「驚くべき事態」が発生してきた。この現象は、「オクトーバー・サプライズ」と呼ばれている。

前回2016年の選挙では、トランプが以前、「俺ほどのスターなら…… pussy(女性器の俗語)を掴んだり、なんだってできる」と発言していた録音テープが10月に表沙汰に。また民主党のヒラリー・クリントン候補には不適切な私用メール問題で再捜査になったり、ハッキングによって民主党内部の電子メールが次々と暴露された。

さらに過去を見ても、例えば2004年の選挙では10月に国際テロ組織アルカイダの最高指導者だったウサマ・ビンラディンのビデオが公開になり、劣勢だった共和党のジョージ・W・ブッシュが息を吹き返した。2012年大統領選では、10月に大規模なハリケーンが発生し、接戦ながら再戦を狙うバラク・オバマ現職大統領がリーダーシップを見せて勝ち切った。

今回、大統領夫妻が新型コロナに感染したというニュースは、これらに匹敵するサプライズである。しかもホワイトハウスでクラスターが起きていることで、これまで新型コロナを過小評価してきたトランプ大統領にとっては大変痛い失態となった。

こうしたドタバタを、普段からトランプ政権に痛い目に合わされている世界の首脳らはほくそ笑んでいるかもしれない。冷戦状態の米中貿易戦争で目の敵にされている中国の習近平国家主席はいうまでもないが、米国を混乱させたいロシアのウラジーミル・プーチン大統領もそうだろう。それ以外でも、トランプ政権が国際的な強調の輪を乱してきたことに快く思っていない欧州などのリーダーもトランプが劣勢になったと内心で喜んでいるかもしれない。

文=山田敏弘

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