家庭内で注意すべきポイントは?
岡部:主要な感染経路が「飛沫感染」だということがわかれば、私たちも対策がしやすくなりますね。まず第一に取り組むべきなのはマスクや手洗い、換気で、これらの認識はすでに浸透してきていると思います。ちなみに、もっと簡便な方法で多くの人を救えるような対策はあるのでしょうか。
環境衛生管理会社「シェル商事」代表の岡部美楠子氏
坂本:残念ながらそれはありません。今まで申し上げてきたように簡単なことを愚直にやり続けることが重要で、ウルトラCはありません。これは病院の感染管理でも全く同じで、「感染経路を断つという原理原則」に基づいて、時には手指衛生のような子供でもできる対策をやり続ける必要があるのです。
岡部:やはり個々人が日々の心がけを地道にやっていくことが重要なのですね。マスクや手洗いなどの対策は簡単にできる反面、継続するうちに気が緩んでしまう人が出てきてしまうことを心配しています。
坂本:例えば、友人や職場の同僚との飲み会で感染したことが疑われるケースは多いです。あるいは、マスクをせずに会議やロッカールーム、休憩室などで話をしたという場合もあります。これらのなかには、発症前の無症状の時期、あるいは発症直後の症状が極めて軽い時期に、つい無防備に話をして感染したケースがあります。普段は予防策をきっちりしているのに、それがつい抜けてしまう場面が落とし穴となることがあります。
東京都内では、家の外で感染した人から「家庭内感染」につながるパターンが増えています。家庭内にひとたび感染者が入ると、狭い空間で頻繁に接するため、感染を防ぐのは本当に難しいです。
新型コロナウイルスが二次感染源としてのピークを迎えるのは発症の数日前から直後だということがわかる。
太刀川:家庭内で気になる部分といえば、トイレでの感染についてはどうでしょうか。
坂本:新型コロナウイルスは排泄物から検出されることがありますが、実際に排泄物を介して新型コロナが広がったという報告はなく、どの程度のリスクがあるのかはまだよくわかっていません。心配だという方は、トイレのあとには石鹸と水で丁寧に手を洗うことですね。
太刀川:他にも身近なところでいうと、スマホの表面をこまめに拭いたりであるとか、帰宅後にすぐに服を脱いでお風呂に入るだとか、そういう工夫を実践している人々もいるようです。それについてはいかがでしょうか。
坂本:私自身はスマホの衛生状態は大きな問題にはなりにくいのではないかと思っています。もちろんリスクはゼロではなく、きれいであることにこしたことはありませんが、「消毒しないと感染しやすい」というレベルではありません。
また、スーパーのレジ袋やエコバッグを拭いたり、帰ってすぐに服を脱いでお風呂に入ったりすることまでする必要は低いかと考えます。それよりもマスクを外して無防備にしゃべらないことや、手をきれいにすることの方が重要なのです。