スポーツ×ソーシャルイノベーションで切り拓く未来

Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images

3月に入り、海外からの一般観客の受け入れを断念する方針を固め、慌ただしさが増す東京オリンピック・パラリンピック。

観客数の上限についてなど、続くさまざまな検討をどう捉えるべきか──。延期開催の経済効果について、野村総合研究所の三﨑冨査雄氏が執筆した「笹川スポーツ財団 スポーツ 歴史の検証」の記事を転載する(2021年1月12日掲載、無断転載禁止)。

氏の観点から過去のオリンピック・パラリンピック大会における功罪のレガシーに焦点を当てた内容だ。


中国・武漢から出た新型コロナの世界的蔓延の影響で、2020年7~9月に開催予定であった東京オリンピック・パラリンピック大会は、丸1年先送りとなった。1896年から始まった近代オリンピックで開催時期が一年先送りになった例は初めてである。

1年の延期にかかる追加費用は3000億円とも言われてきたが、コロナ感染が世界的にも収束するかどうか見通せない状況で、2021年夏の開催も本当に実現するのかどうかについては今なお懐疑的な見方もあり、予断を許さない。産業能率大学スポーツマネジメント研究所が2020年7月にスポーツファンを対象に実施したアンケートでは、84.8%が「現実問題として、来年の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催も難しいと思う」と回答した、というニュースも2020年10月下旬に話題となった。

開催国である日本も、開催都市である東京も、主催者である国際オリンピック委員会(IOC)も、なんとかして2021年夏の開催を実現しようということで、大会関係者の参加人数を10~15%程度抑制するなど、様々な知恵を絞っている。

現在の世界をとりまく状況を鑑みるに、選手・関係者はもちろん、多くの観客が世界中から東京に来てオリンピック・パラリンピックを観戦したり、選手を応援したりするという、当初想定していた形での大会開催は絶望的だろう。開催するにしても、観戦者数の制限は確実であろうし、声援を送ることや会場内での飲食が制限される可能性も小さくないだろう。それでいて、チケット収入はもちろん、インバウンド消費も期待できないのに、コロナ対策費用がかさむという状況が想定される。

そのような状況にあっても、延期してでもオリンピックを開催しようと努力していることに関して、日本国民はどちらかといえば肯定的であると言えよう。野村総合研究所が大崎企業スポーツ事業研究助成財団から受託して2020年6月に全国2000人の生活者を対象に実施したアンケートでは、コストが増加しなければ賛成という意見も含めれば、約6割が延期開催賛成派である。

さすがに3000億円以上の追加費用がかかっても延期して開催すべきという意見の人は15.5%に留まっているものの、3000億円程度のコスト負担もやむを得ないという意見も含めれば、コスト増でも開催に積極的な国民は全体の約4割にのぼっている。

図表1 東京2020オリンピック・パラリンピックの延期開催についての意見(N=2060)



出所)「新型コロナウイルス禍状況におけるスポーツに関する価値観調査アンケート」(2020年6月実施)

では、なぜ延期開催に賛成であるのか。その理由を見ると、「オリンピック・パラリンピックを開催することで落ち込んだ経済を活性化させられるため」(54.6%)や、「オリンピック・パラリンピックを開催しなければ大きな経済損失となってしまうため」(43.4%)という、オリンピック・パラリンピック開催による経済効果を期待した意見が比較的多く、「開催しなければ選手がかわいそう」(37.7%)や、自身が「日本で開催されるオリンピック・パラリンピックを観たい」(32.4%)といった意見は相対的に少ない。

図表2 延期開催に賛成である理由(N=786)



注)「東京2020オリンピック・パラリンピックの延期開催」について「3000億円程度、又はそれ以上費用をかけても延期して開催すべき」と回答した者への質問
出所)「新型コロナウイルス禍状況におけるスポーツに関する価値観調査アンケート」(2020年6月実施)

文=三﨑 冨査雄(野村総合研究所)

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