本連載では鈴木氏に、「超多忙なビジネスパーソンが自分の心を守りながらパフォーマンスを上げる方法」を教えていただく。第2回は、そもそも「産業医とは何か」にスポットを当てていただいた。
私は5年務めたアマゾン ジャパンを6月で「卒業」してから、現在は「アッシュコンサルティングサービス」代表として、数社の企業で産業医活動をしています。
実は産業医は、少なくとも私は、執務中は白衣は着ません。なぜなら、面談する目的は、「治療」ではなく社員(組織)への「ソリューションの提供」であり、面談の対象者は「患者」ではなく、ソリューションを求める「社員」だからです。「治療者と患者」では、どうしても無言の上下関係が芽生えてしまいます。白衣は治療者の象徴なので、この様な上下関係が再現されてしまうので、それを避けるために執務は私服で行っています。
私がそもそも産業医を志した理由も、関わる人たちと対等な目線でコミュニケーションを取りたかったから、というのもあるのです。
「産業医」にはどうしたらなれる?
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「産業医」という言葉は、昭和47年に定められた「労働安全衛生法」で初めて誕生します。中では「産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない」などと書かれています。
さて、そもそも「産業医」にはどうしたらなれるのか、とよく聞かれることがあります。もちろん、医学部を出ることが基本ですが、とくに産業医の資格を取得するためには、以下、2つの方法があります。
1. 日本医師会のカリキュラムに基づく50時間の研修を受け、同医師会が認定する産業医の資格を取る
2. 産業医科大学の「産業医学基本講座(朝から晩まで、1カ月程度の講座)」を受講することで、産業医科大学産業医学ディプロマが授与される
ちなみに産業医科大学は、現在の厚生労働省が1978年に開設した、産業医を養成することを目的にした大学です。「産業医学」専門の医科大学としては世界に一つしかない学府です。
「専門医」の資格となるとまた別で、「日本産業衛生学会」が専門医制度を管理しています。私はこの学会の2日間にわたる試験を受けて専門医の資格を取得しました。筆記に加えて面接やグループディスカッションもあり、社会倫理や労務知識についての質問もありますから、ずいぶんと勉強をした記憶があります。