大坂なおみの抗議行動に見る、新しい「広告塔」のあり方

企業の「広告塔」として引っ張りだこの大坂なおみ選手(写真=シチズン)

企業の「広告塔」として引っ張りだこの大坂なおみ選手(写真=シチズン)

女子テニスの4大大会・全米オープンで2年ぶり2回目の優勝を果たし、米国のニュース誌「タイム」が選出する「世界で最も影響力のある100人」にも2年連続で名を連ねた大坂なおみ選手。グローバルな規模で人気を得ている彼女はスポンサーからも引っ張りだこの状況で、現在は15社のスポンサー企業と契約している。

今年6月からアメリカで盛んにおこなわれているBLM運動では、すでに多くのアメリカのアスリートたちが賛同の姿勢を表明しているが、大坂なおみ選手も人種差別に抗議するマスクを身につけてコートに立った姿が注目された。

企業のイメージキャラクターが担う社会的な「価値観」もCMの要素として重要視される今日、企業が感じている大坂なおみ選手の「広告塔」としての魅力とはなにか。


米フォーブスが発表した「世界で最も稼ぐ女子スポーツ選手ランキング」の2020年版で、大坂なおみ選手は過去4年間にわたりトップに君臨してきたセリーナ・ウィリアムズを抜き首位に輝いた。大坂選手の年収額は女子スポーツ史上最高となる3740万ドル(約40億円)とされており、そのうちの3400万ドルはスポンサー収入であった。

2018年全米オープンと2019年全豪オープンで2度の4大大会優勝を果たした後、大坂選手の元には多数のスポンサー契約が舞い込んだ。現在では日清食品や日産自動車などに加えて、ナイキやマスターカードなどのグローバルブランドを含む15社と契約している。

シチズン時計は2014年から「Better Starts Now=どんな時であろうと『今』をスタートだと考えて行動する限り、私たちは絶えず何かをより良くしていけるのだ」をブランドステートメントとして掲げ、2018年からこれを体現する「象徴的な存在」として大坂なおみ選手をブランドアンバサダーに起用している。世界の舞台でトップアスリートとして活躍していても慢心することなく、「今」をスタートとして新たな挑戦に向かってゆく姿勢が、1918年の創業から100年以上経過しても挑戦をやめないシチズンの姿に重ねられる。

プロテニスプレイヤーとしてシチズンの腕時計を試合で着用するだけでなく、アンバサダーとして広告にも登場する大坂選手は「シチズンブランドの顔」を担っている。全米オープン2020大会では、ブルーとイエローの爽やかなコントラストが映える「大坂なおみモデル」を着用して参戦し、グランドスラム3勝目を達成した。⼀流のアスリートとしての実⼒を知らしめ、世界からの注目度はうなぎのぼりだ。

一方、今回の大会では大坂選手が黒人抗議運動「BLM」の姿勢を打ち出すため、警官や人種差別の暴力の犠牲となった被害者の名前をマスクに記して臨むパフォーマンスを行い、賛否両論を巻き起こした。
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文=渡邊雄介

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