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社会的マイノリティの眼差し

昨年の全米オープンに出場した大坂なおみ選手。今年は前哨戦となる大会での「ある行動」が注目された(Getty Images)

今年6月からアメリカで盛んにおこなわれているBlack Lives Matter運動(以下、BLM運動)には、多くのアメリカのアスリートやチームのマネージメントに携わる人たちにも、目に見える変化を及ぼしている。

以前ほどBLM運動が話題になっていない日本でも、テニスの大坂なおみ選手がニューヨークでのツアー大会で示した行動が大きく取り上げられ、再び注目された。大阪選手は、黒人差別の抗議のため、27日の準決勝戦を辞退したが、大会自体が大坂選手の意思を尊重し、27日の試合を全てキャンセルして28日に延期したことから、ボイコットを取り下げてプレイした。

そのきっかけは、残念なことに再び起きてしまった黒人に対する警察の不当行為。8月22日シカゴとミルウォーキーの間のミシガン湖沿いにあるケノーシャという中小都市で、白人警察が黒人男性に向けて銃撃したのだ。

アメリカでは再び何が起こっているのだろうか。その詳細を振り返りたい。

3人の子どもの前で起きた、ジェイコブ・ブレイク銃撃事件 


被害者のジェイコブ・ブレイク(29歳)は、道端で目撃した女性たちの喧嘩を止めようとした際、誰かが呼んだ警察から犯罪者のように扱われた。何も悪いことをしていないのに、いや、いいことをしていたにもかかわらず、悪者扱いされた。現場に行った白人警察官たちの黒人に対する偏見が、彼らの不当行為につながっているのは間違いない。

ビデオに写っていたように、彼が警察の言うことを聞かず、車の運転席に歩いて行ったのは、間違いなく警察の差別対応に対して彼がとった抗議だった。

武器を持たず無防備な彼は、車の運転席のドアを開けた瞬間、警察に後ろから発砲された。中で座っていたこどもたちの恐怖を想像してみてほしい。3歳から8歳の3人の子どもの目の前で父親が撃たれたのだ。下手をすると、子どもたちにまで弾が当たっていたかもしれない。なによりも、こども達をそんな恐怖にさらしてしまったことが、親として耐えられないと私は思う。

ブレイク氏は下半身不随となった。今も重症のままだ。彼はシカゴの北に位置し、経済的上流階級が多く住むエバンストンで、教会の牧師で活動家の両親のもとに育った。彼は、困っている人がいたら助けるのが良い行いであると信じてきたに違いない。だが、結果として警察はそんな彼を下半身不随にした。彼が白人だったら、このようなことは起こらなかったはずだ。

この事件を機に、ケノーシャでは警察による暴行反対のデモが始まった。残念ながら平和的なデモではなかったが、それだけ人々の怒りが我慢の限界に達した証拠だろうか。

悲劇はさらなる悲劇を生んだ。

文=大藪順子

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