トップアスリート柴崎 岳が考える言語と非言語と体験の価値

柴崎岳

サッカー選手の社会貢献活動が近年注目されている。サッカー日本代表チームで2018年のロシアワールドカップの中心選手として活躍した柴崎岳も、アスリートのマネジメント事業を手がけるUDN SPORTSの所属アスリートからなる社会貢献団体「UDN Foundation」に参加し、精力的に活動するひとりだ。

20年5月、UDN Foundationは『「#つなぐ」プロジェクト』を発足。全国の学童や医療従事者へマスク20万枚と選手たちのメッセージが入った手紙を配布し、メッセージムービーを展開。柴崎は故郷・青森県の福祉現場へ1万枚のマスクを寄付し、動画では地元県民へエールを送った。柴崎は本プロジェクトに携わった理由をこう述懐する。「選手である以前に、人間としての生活が脅かされ、サッカー選手としてもピッチに立てない。プレイ以外で社会とつながり、苦しみのなかにいる人たちの気持ちを少しでも和らげられたらと考えました」

UDN Foundationは、子どもを中心とした教育・生活支援を行う団体への寄付活動、社会貢献活動を行う団体だ。柴崎が19年5月の同団体設立当初から参加しているのはなぜか? きっかけは12年の初招集以降の、日本代表チームでの会話だった。

「代表チームには海外で活躍する選手がたくさんいました。彼らとの会話から世界のトップアスリートが自分の価値を社会に還元する活動を当たり前のように行っていることを知り、深く考えるようになりました。自分がしたいことを突き詰めてみると、現役のうちに未来の日本代表を育てる、というアイデアにたどり着きました。UDNはその考えに共感してくれた」と柴崎は話す。子どもの育成にこだわる理由は大きく2つだ。

「一人の大人としてよい影響を与えたいからです。子どもたちは周りの環境、指導者や親などの大人の影響を大きく受けます。だからこそ、子どもが試合でうまくプレイできないとき、失敗した原因を子どもに求めず、指導者に原因を求めるべきだと考えます。周りの大人が育つことで子どもが育つ。僕は子どもにかかわる一人の大人として、子どもに何かをしたいと思ったんです」

もう一つの理由は、W杯での勝利のため。「次世代を育て、日本がW杯でベスト8やベスト4、優勝を狙える位置にいきたい。でも現状は、優勝は無理だとは言いませんが、可能性はかなり低いのが現実。今が10回出場して1回優勝できるかどうかのレベルだとしたら、10回出場して5回優勝できるようにしたい。そのためには世代を跨ぎ、日本サッカーのレベルを底上げすることが不可欠です」
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文=田中一成 写真=平岩亨

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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