表情認識による映像生成技術でできること
吉田は将来同社の技術の活用が見込まれる領域を5つあげる。
1つ目は接客の領域。吉田はコールセンターに例える。「現在でも、はじめに自動音声によるガイダンスがあり、オペレーターが必要になるまでの案内をしています。ビデオ通話の普及により、これからはコールセンターをビデオ通話に置き換える企業も出てくるはずです。途中まで画面上のアバターを通してAIが通話し、必要な時にのみアバターの中身がオペレーターに切り替わるという未来がやってくるかもしれません。コロナ以前には、対面接客が必要とされていたお店でも同様のオペレーションが想定できます」
2つ目は教育。遠隔授業の際、先生の顔を映すのではなく、子供の好きなキャラクターのアバターに先生の表情に当てはめることも可能だ。簡単に子供が喜ぶコンテンツを作ることができる。
3つ目はタレントビジネス。タレントがバーチャルな顔を貸し出して、ライブや番組に出演することが可能になる。毎朝好きなアイドルに起こしてもらうことも夢ではない。
イーロン・マスクの写真を操り、ウインクをする吉田
4つ目はVtuber。日本では萌えキャラを動かすVtuberが多く、独自の進化を遂げている。従来、アバターを作成するにはかなりの費用や設備が必要で参入障壁が高かったが、このアプリを使えば写真や絵が一枚あるだけで動かすことができる。
5つ目はファッション。画面上のアバターを装飾することで、自分の体に規定されない自由なファッションが楽しめるようになる。毎朝の身支度の必要がなくなる上に、自分の若い頃の写真を使ったり、異性の写真を使ってコミュニケーションをとったりすることもできる。おしゃれの概念が変わってしまうと言えるかもしれない。
吉田は同社アプリケーションの未来をこう語る。
「使う人が増えていくと、私たちが想定していたものとは全く違う表現が生まれてくると思います。今まで2次元の世界で捉えられていたアニメキャラとは全く別の『キャラクターのような概念』が生まれてくる可能性もある。利用する人が増えれば増えるほど、新しい表現が生まれていくようなサービスを目指しています」
同社は現在、音声から口や体の動きを合成する技術を開発中だ。これが実現すれば、身支度なしでビデオ会議ができる今の機能に加えて、画面の前にいる必要すらなくなるという。家事や育児で手が離せなくても、まるで画面の前で話しているように見せることができるようになるのだ。
コロナ禍のリモートワークに欠かせなくなったビデオ通話に、「Xpression Camera」という新しい選択肢ができた。どんな装いをしていても、表情を映すだけでビデオ会議に参加することができる。この機能をどう使うかに制約はない。選択肢が増えるたびに、新たな働き方・生き方が生まれていきそうだ。