新型コロナウイルスから命を守るためのウェブサイト「PANDAID」を立ち上げ、世界中に広がる感染者の状況を可視化する活動をしている、デザイン事務所「NOSIGNER」代表の太刀川英輔と、公共空間のあり方について思索する都市戦術家の泉山塁威の対談連載。(前回はこちら)
今回は「ウィズコロナの時代に適合した通勤やオフィスのあり方」をテーマに、都心と郊外の関係がどのように変化していくのかについて紐解いていく。
「ステイホーム」のまま通勤も?自動車の未来
太刀川:コロナ禍をきっかけに「東京一極集中で本当にいいのか」という問題など、これまでのライフスタイルを根本から見直す必要性がでてきました。リモートワークやオフピーク通勤が推奨されたりもしていますが、少なくとも「密」な状態を強いる都心への満員電車通勤は抜本的に見直されていくべきかと思います。
泉山:街づくりの観点からいえば、満員電車を避けるために電車移動を減らしたとしても、街全体を「コンパクト」にして徒歩で移動できる範囲の生活が豊かになれば、充実した日常生活を送ることは可能だと思います。
しかし仕事面では、どうしてもリモートワークや徒歩移動だけでは対応しきれない部分が出てきてしまいますよね。そんな時に頼れるのはやはり車での通勤だと思うのですが、何か変化は起きているのでしょうか。
太刀川:最近は面白い試みが出てきていますよ。緊急事態宣言での「ステイホーム」経験を経て、「家が動けばいいのに」と妄想した人もいるかもしれません。この逆転の発想は単なる夢物語ではなく、現実的な未来として近づいてきています。
電気自動車や自動運転の技術が進歩したことで、自動車の基本的機能は車体を支える枠組み部分である「シャーシ」へと組み込めることができるようになりました。実はいま「車の部屋化」が進んでいるのです。言い換えれば、部屋の一部がそのまま移動手段になるということです。
このような試みは、自動車メーカーだとフォルクスワーゲンやトヨタ、また電機メーカーではパナソニック、SONYなどが取り組んでいます。「移動手段としての部屋」という考え方が一般化すれば、通勤に対する考え方も大きく変わっていくかもしれませんね。
自宅を「集中できるオフィス」へと変える発想
泉山:通勤のかたちが変わっていけば、当然オフィスのあり方も変化していくと予想できます。今後リモートワークがますます浸透していけば、都内にオフィスを構える会社は減っていくかもしれません。
太刀川:実際のところ、都会にある超高層ビルの「密」な空間で仕事を続けることに不安を抱える人は少なくないでしょう。その観点からいうと、コロナ禍でのオフィスの変化としては、やはり自宅をオフィスとして使う人が増えていますよね。
泉山:これまでは「LDK(リビング・ダイニング・キッチン)」のように、用途ごとに家の空間を分けていましたが、自宅をオフィスを兼ねた空間として使用するとなると、少し発想の転換が必要になってきそうです。
太刀川:そういう意味では、コロナ禍を機に同じ空間を時間で区切って用途を変えて使いたいというニーズは確実に増えてきていると思うんです。例えば、Zoomを使用して会議をするときがそうですよね。