ソーシャルディスタンスを意識した生活が求められるウィズコロナの時代には、街はよりオープンになるように期待されている。世界ではすでに様々な変化が顕在化してきているが、東京はこれからどのような街を目指していくべきなのか。
新型コロナウイルスから命を守るためのウェブサイト「PANDAID」を立ち上げ、世界中に広がる感染者の状況を可視化する活動をしている、デザイン事務所「NOSIGNER」代表の太刀川英輔と、公共空間のあり方について思索する都市戦術家の泉山塁威の対談連載。(前回はこちら)
今回は「過密都市の東京に求められる変化」をテーマに、世界中で行われている街をオープンにするための施策について紐解いていく。
路上を活用してソーシャルディスタンスを保つ
太刀川:ウィズコロナの時代に東京の街がどのように変化していくべきなのかについてお話できたらと思います。最近では、東京のような超過密都市に住むことに対して人々が迷いを持つようになってきましたよね。コロナ禍に直面したことで、多くの人がソーシャルディスタンスを意識して生活するようになったからです。
「街づくり」という観点からみると、世界の都市はどのように変化しているのでしょうか。もし東京が見習えるような事例があったら教えてください。
泉山:新型コロナの影響で、飲食店が積極的に路上を活用するようになっていますね。例えば2020年の5月には、リトアニアの首都ビリニュスで興味深い例がありました。レストランなどの飲食店で客席を道路上に出して営業するスタイルを政府が認めたのです。
本来は店内に30席あったお店が、ソーシャルディスタンスを保つために20席になってしまったら、売上・利益ともに確保できないですよね。だから、屋外の道路に臨時で座席を作って良いという政策を打ちだしたのです。屋外にも客席を作ることで、売上を確保しようという事例ですね。
またアメリカのニューヨーク市でも、屋外飲食プログラム「オープン・レストラン」が行われていますよね。これは車道の一部や歩道をダイニングスペースとして使用することを許可するプログラムです。
通常時であれば客席を道路に出しているので、道路占用料という形でお金が徴収されるのですが、いまはニューヨーク市が金銭的な援助を行なっています。ソーシャルディスタンスを守りつつ、営業を続けるために努力がされていますね。
NY市の「オープン・レストラン」政策では、屋外客席の基準が細かく定められる(NY市政府ウェブサイトより引用)
路上にウッドデッキを設置するサンフランシスコの試み
太刀川:ソーシャルディスタンスを守るために路上を活用するという観点で見てみると、サンフランシスコ発祥の「パークレット(Parklet)」にも、同様の可能性を感じています。パークレットというのは、路上駐車スペースにあるパーキングメーターを潰してしまって、そこにウッドデッキとテーブルを置いた小さな公園のようなスペースのことです。