1日のうちの多くても数時間の会議のために、Zoom専用の部屋を作ろうという発想はナンセンスです。実際には、パーテーションを置くなどすれば解決する問題ですから。最近はそのようなニーズに応える商品も出てきているんです。
スイスの家具メーカー・ヴィトラが出している「アルコーヴ」という間仕切りのあるソファーなどが代表的ですが、最近はパナソニックから約1平米の半個室空間を作ることができる「KOMORU」という机が発表されていました。リビングで仕事をする際でも「集中モード」で効率をあげたいというニーズにあった商品だと思います。
約1平米の半個室空間を作ることができる「KOMORU」(写真=Panasonic)
泉山:部屋の中に「集中できるゾーン」をどうやって盛り込んでいくのかを考えるのは面白いですね。工夫次第で色々な可能性がありそうです。
そもそも「LDK」という概念自体が、会社勤めの父と専業主婦というような昭和的な考え方が前提となっている気がします。でもこれからはそのような前提を取り払う必要がある。時間帯によって用途を変えることで、「リビング」を仕事場を含めた多目的な空間として利用することも、これからは一般的になってくるのではないでしょうか。
コロナ禍で注目される「ワーケーション」的な働き方
泉山:自宅で仕事する機会が増えてくると、通勤時間を短縮するためにわざわざ会社の近くに住む必要がなくなってきます。そうすると、郊外であっても今より広い家に住みたいと考える人が増えてくるのではないでしょうか。
これまでのように毎日会社へと通勤するライフスタイルだと、郊外に生活の拠点を置くのは負担が大きいかもしれませんが、通勤頻度が少なくなれば魅力的です。
例えば、下北沢に暮らしていた人が同じ家賃で町田や調布へと引っ越すとなれば、同じ家賃でも少し広い家に住むことができますよね。広い家でのびのびと仕事をした方が、効率も上がるかもしれません。
太刀川:最近では都心から離れたリゾートに滞在する「ワーケーション」という働き方も流行りつつあると思いますが、それも広々とした場所でのびのび仕事がしたいという点でいえば共通していますね。
泉山:以前であれば「リゾート地」といえば仕事から切り離されたイメージでしたが、今であれば「ちょっと1ヶ月のあいだ軽井沢にこもって仕事する」なんてことが気軽にできてしまいますからね。郊外へと引っ越しをするのは躊躇するという人も、少しのあいだだけ「リゾート地で仕事してみよう」ということができる時代になっています。
太刀川:そう考えてみると改めて、都心との関わり方の選択肢は確実に広がってきていますね。
太刀川英輔と泉山塁威の対談連載は、今回が最終回。新型コロナウイルスによって、人々の生活にどんな変化を起こし、新たなニーズについて語ってきた。今後もPANDAIDとして、パンデミックから命を守り、豊かに暮らす方法を紹介していきたい。
連載:パンデミックから命をまもるために
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