OSCは、雨水を活用した安定的な水資源の確保と供給を目的とした、簡易的な建築物と事業モデルのデザイン提案だ。オープンソースと地域資源の活用することで、低コストでの導入実現を目指す。
ケニア発のデザイン・ソリューション
ケニアのナイロビを拠点にするベルタワーは、2014年設立。今回「デザイン賞」で優勝した同社だが、いわゆるデザイン事務所というよりはコンサルティング会社に近い。
リスク管理、情報技術、設計、プロジェクト管理、戦略など、各事業分野の専門家集団だ。今回を受賞したチームのメンバーは、ジョン・ブライアン・カマウ(John Brian Kamau)、ジョイス・ワイリム・ガチリ(Joyce Wairimu Gachiri)、イアン・ギテギ・カマウ(Ian Githegi Kamau)、エスター・ワンジク・カマウ(Esther Wanjiku Kamau)、アービン・ブッカー・カマウ(Arvin Booker Kamau)の5名。
事業計画・戦略を担当するジョン・カマウは、数学・物理学を学んだ後、米国のJPモルガン・チェースやGEキャピタルなどで、データ分析などの数値管理の経験がある。他のメンバーも、建築やプロダクトデザインではなく、IT系のキャリアを積んだ人々だ。
OSCのデザイン・ソリューションが解決を目指す課題が、ナイロビにあるアフリカ最大のスラム地域と言われるキベラなどにおける、安全な水資源へのアクセス。同社のプレゼンによると、現在、ケニアの約40%が安全な水資源にアクセスできず、川や池などから汲んできた水を生活用水として使用している現状だ。
写真提供:Lexus
安全な水が確保できなければ、感染症や子供の健康といった公衆衛生の課題も発生する。水道管のインフラがあっても、その25%ほどが、メンテナンスが必要な状態で機能していないという。キベラ地域で生活する人々など、1日約300円以下で生活する都市部の貧困層にとっては、インフラの有無だけでなく、コストもアクセスを阻害する要因となる。
OSCは、竹などの地域の材料を使って、ローコストで建築できる、オープンソースの小規模貯水・給水所の展開によって、インフラとコストという2つのアクセスの課題の解決を図る事業モデルだ。このプレファブ建築は、5人のビルダーが10日間で設営可能。
雨水を効率的に集めるための屋根がついた建物には、貯水・給水用のタンクが格納され、それ以外の空間は、トレーニングセンター・給水センターなどとして活用できる。水質は、目視とデジタル・デバイスの両方で管理。問題があればバイオ・フィルターで濾過することで、ウィルスの86%と細菌の99%が除去される。