経済・社会

2020.09.02 12:00

大坂なおみ選手の「棄権」で再注目 米スポーツ界の抗議に変化

昨年の全米オープンに出場した大坂なおみ選手。今年は前哨戦となる大会での「ある行動」が注目された(Getty Images)


8月25日に行われたデモに向かってライフルで襲撃し、2人の命を奪い1人に重傷を負わせた犯人のカイル・リッテンハウスは17歳だった。警察官になるのが夢だったという少年だ。自分で自分の夢を奪うことになるとは、この17歳は想像できなかったようだ。
advertisement

デモ参加中に、リッテンハウスに殺されたのは36歳と26歳の白人だ。そのうちの一人は、現場から去ろうとする犯人をスケボーで追いかけて捕まえた際、撃たれて亡くなったという。

ケノーシャで抗議デモに向けて起きた発砲事件
ジェイコブ・ブレイク銃撃事件から3日後、ケノーシャで抗議活動中に発砲事件が発生した(Getty Images)

不法に銃を保有し殺人を犯した17歳の犯人は、トランプ大統領支持層からはなぜかヒーロー視され、被害者の方が悪いという世論さえ起こっている。そんな白人優位主義者たちが、実際にリッテンハウスのために集め始めた基金により、彼に有利な弁護士がつくこと間違いなく、彼は死刑になることはないだろう。昔ビリー・ジョエルが「Only the good die young(早死にするのは善人だけ)」と歌っていたのを思い出す。リッテンハウスも、彼が殺した人たちより長生きするだろう。
advertisement

ケノーシャ警察は、ブレイク氏を撃った理由を、彼がナイフを持っていたからというが、そのナイフは車の中にあったことが立証されている。その反面、州を越えて不法で銃を持ち込み殺人を犯した白人の17歳殺人犯に対する逮捕は非常に遅かった。これが、White Previledge(白人特権)の実態だ。

それにしても何人が撃たれ、命を奪われなければ、全米ライフル協会(NRA)のロビイストや、NRAから寄付を受けた政治家たちは、戦場でもない普通の生活に機関銃が必要ないことに気付かないのだろう。きっと彼ら自身の愛する人が被害者にならない限り、その時はこないのかもしれない。

スポーツ選手の抗議 周囲にも変化の余波


ブレイク氏に起こったことに抗議するため、数日の間に起こったことで特筆すべき点は、スポーツ選手の抗議声明発表と試合のボイコットである。

事件が起こったウィスコンシン州ケノーシャに近いミルウォーキーのバスケットボールチーム、ミルウォーキーバックスでは、オーランドマジックとの試合をボイコットするといち早く表明。それにより、バスケットボールのNBA、女性版のWNBAがさらなるリードをとり、メジャーリーグの野球とサッカーの試合もキャンセルする事態となった。

プロアスリートたちの人種差別に対する抗議運動は、今に始まったことではない。2016年アメフトの試合開始前の国歌が流れる際、サンフランシスコ49ersのコリン・キーパニックが膝をつくという行動をとった。これも警察の黒人に対する暴行への抗議だった。
次ページ > 選手の抗議をサポート。ここ数カ月で目に見える変化も

文=大藪順子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事