最近では、コンバースジャパンの環境に配慮したエコ素材のシリーズ「コンバース イーシーラボ」で、ハーブや紫キャベツの染料を使った素材のスニーカーをコラボ展開するなど、メディアで取り上げられ、SNSでも話題になっている。
「フードテキスタイルの良さを編集してもらうのがブランドです。ストイックに独自のコレクションだけで尖ったものにするのではなく、外部のブランドとコラボすることで、廃棄食材で染色するというキャッチーな仕組みをさらにアピールができ、社会へのインパクトが増すと考えています。そして地球環境へのサステナブルな意識にもアプローチできたらと考えています」
エシカル発展途上な日本 CSRを超えてCSVのビジネスモデルへ
アパレル業界を巡っては、すでに「エシカル消費」を意識したサステナブルな商品が注目されて久しいが、ヨーロッパに比べると日本はまだまだその面では発展途上と言えるだろう。
フードテキスタイルとして、2020年2月にパリのテキスタイルの展示会に出展したが、いくつかのヨーロツパのラグジュアリーブランドからも声がかかったという。その後、コロナ禍もあり、ブランドの動きは一時鈍化したものの、手応えは大きかったという。
「ヨーロッパのブランドさんの意思決定の動きはかなり速く、必ずフードテキスタイルを取り入れてくれると信じています。なので、海外への販路はしっかりとつくりたいです。日本では環境に関しては言葉だけが先走っていて、アパレル業界でも未だに売り上げや値段を中心に商品が考えられています。
フードテキスタイルでは、テクノロジーとうまく掛け合わせて、エコを実現できるような仕組みづくりをしていきたいですね」
企業の社会的責任であるCSR活動の領域を超え、CSV (Creating Shared Value)、自社の強みで社会的な価値を創造することで経済的な価値をも獲得するという考えのもと、ビジネスとして長期的に持続可能な成長へと繋げていくことが谷村の目標だ。
5年前、自ら抱えた悩みを打開するために異業種交流会に参加したことからから始まったプロジェクトは、ついに約1億円のビジネスに成長し、収支も成り立つようになった。社内での仲間も5人ほどに増えた。今後はひとつのチームのビジネスモデルとして確立していくと、谷村は力強く言い切った。
「その服、何で染められているの?」藍染や天然染が盛んだった昔はそんな会話があったのかもしれない。デジタルシフトする社会で、再びそんな会話が生まれたら面白いだろう。このシャツはブルーマロウというハーブで、この靴下は抹茶で、この靴はブルーベリーで、このバッグはドリップコーヒーでというように──。