一方で、パンデミックへの対応は、大気汚染の急激な減少をもたらしました。コロナ危機の間に空気がきれいになったことで、ヨーロッパでは11000人の死が回避されたという推算もあります。世界的に見ても、30億人の人々が自宅待機したこととその経済的な影響によって、今年の温室効果ガスの排出量は今年5.5%減少すると予測されています。それにもかかわらず、明らかに一時的なものとはいえ、このような大規模な削減を行ったとしても地球温暖化を1.5℃に抑えることはできないでしょう。最新の科学によれば、そのためには年間7.6%の削減が必要となります。本当に途方もない変化が必要なのです。
ポストコロナの世界に残る希望の光は?
それでも、かすかな希望の光はあります。新型コロナウイルス感染拡大が教訓的な物語であったとすると、それはこれから起こり得ることについての特訓コースでもあるのです。私たちは、個人または集団で創意工夫を凝らし、その体験を共有することでこの危機に対応し適応していくでしょう。そして、おそらく最も重要なのは、健康を私たちの心の中心に据えることによって新たな道が次第に実現可能となり、可能性も広がっていくということです。
新型コロナウイルスの感染拡大は、あらゆる次元での実験につながりました。人の暮らし方、働き方、移動の方法や、政府・雇用との関係が変わり、従来の傾向が促進されたケースもあります。いくつか例を挙げると、テレワークが標準になったこと、より多くの消費者の購買がオンラインに移行したこと、歩行やサイクリングに対応するために道路を整備する実験が市当局によって実施されていること、そして、一時的ではあるものの海外旅行が事実上停止したことなどです。
これらの進展はこのままの勢いで続くわけではありませんが、その痕跡は予測もできない形で私たちの生活と私たちのポストコロナの世界に残っていくことでしょう。
より直近では、パンデミックの経済的影響に対処するための刺激策が、将来に向けてより健全な道筋を描くものになるよう求める総意が急速に台頭しており、それは、私たちが従来とは異なる方法で対処していく責任があることを示しています。重要なのは、この立場は経済界の大半が受容しているものであり、従来通りのやり方を続けることや、これまでのようにビジネスを継続することはできないこと、そして「ニューノーマル」のあり方は人々と地球の健康を中心としたものでなければならないことを認識していることです。
これまでに、世界の700社以上の企業が世界のリーダーたちに向けた公開書簡に署名し、経済刺激策によって新型コロナウイルス感染拡大の影響と現在進行中の気候危機の両方に確実に取り組むことを求めています。一方で、世界全体で少なくとも4000万人の医療従事者を代表する4500人以上の医療専門家と、350以上の組織が、G20のリーダーたちにグリーン・リカバリーを確実に実施するよう求めています。