経済・社会

2020.08.23 07:30

パンデミックからの回復は、気候変動の「ワクチン」になるか

南カリフォルニアではロックダウン中に大気の質の改善した(Getty Images)


新型コロナの感染拡大と気候危機には関連性がある


新型コロナウイルスの感染拡大と気候危機の間には明確な関連性があります。まず、気候変動は病気を媒介する動物の生息地を変化させ、森林伐採による種間の接触を増加させることで、コロナウイルス型パンデミックの可能性を増大させます。
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さらに重要なのは、災害が連鎖的に発生する可能性が非常に高くなるということです。新型コロナウイルスの場合、健康への影響は感染に留まらず、広範な経済的・社会的な影響によって増幅されます。短期的に私たちはより多くのリスクにさらされることになるのです。昨年は、ヨーロッパでの破壊的な熱波、オーストラリアでの空前の山火事、数千人の死者を出したアフリカ南東部沿岸沖のサイクロン・イダイなど数多くの異常気象が発生しました。

社会は現在、パンデミックの経済的な影響によって打撃を受け、危機管理能力は限界の一歩手前となり、医療システムはパンク寸前の状態ですが、2020年は同じような異常気象の衝撃を受けないと考える理由はないのです。より長い時間枠で考えると、新型コロナウイルスの感染拡大は、世界経済、世界や地域の食料システム、災害対応や社会保護のための利用可能な資源に影響を与え、これは人類に身体的・精神的健康に深刻な影響を及ぼすことになるでしょう。世界銀行は現在、2020年に4000万人から6000万人が極度の貧困に追い込まれ、貧困削減の進展には約3年分の遅れが出ると予測しています。

かすかな希望の光はあります。新型コロナウイルスによる危機が教訓的な物語であるとすれば、それはこれから起こり得ることについての特訓コースでもあるのです。
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──マリア・メンディルース氏&ホセ・シリ氏

同じように、複数の穀倉地帯の破綻から気候に起因する紛争や難民危機に至るまで、気候変動が生み出す事象は拡大・増殖していくでしょう。新型コロナウイルス感染拡大は多くの点で前例のないものですが、IPCCの特別報告書「1.5℃の地球温暖化」で強調されているように、気候変動によって、これまでよりも大きな衝撃がより長い時間枠で発生する恐れがあります。十分な対策を講じなければ、気候危機が健康や経済に及ぼす長期的な影響は毎年のように繰り返されることになります。

例えば、「暑さ」だけをとっても、2030年までに世界経済が被る損害は2兆ドル以上となり、一部の国ではGDPの6%以上の損失が発生する可能性があります。身近なところでは、気候危機の大きな原因ともなっている発生源からの大気汚染によって、1年間(2018年)で世界のGDPの3.3%に当たる2.9兆ドルの損害が発生し、約18億日の労働日が失われる結果につながったとWHOは警告しています。

新型コロナウイルスと気候は複雑な形で交差しています。例えば、人口が大気汚染にさらされている地域における感染症の結果がより深刻であるなど、気候変動を引き起こすのと同じ要因の一部はパンデミックを悪化させています。これは驚くべきことではありません。WHOによると、大気汚染は年間700万人が早死にする原因となっており、他の疾患の危険因子となっていることも多いのです。実際、気候変動の根底にある要因の多くが健康に広範囲な影響を及ぼすことは、長い間知られてきました。
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文=María Mendiluce CEO, We Mean Business; Jose Siri Senior Lead, Science, Cities, Urbanization, and Health, Our Planet, Our Health (OPOH), Wellcome Trust

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