カオスから本質を掴む4つの方法

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ジャーナリストの目を手に入れる


現代の職場はカオスだ。誰もが声を張り上げて、私たちの注意を引こうとしている。そんな環境だからこそ、誘惑に惑わされず、本質をつかみとらなくてはならない。自分の内なるジャーナリストを呼び覚ますための方法を、いくつか紹介しよう。

1. 日記をつける


ジャーナリストという言葉は、ジャーナル(日記)と語源を同じくしている。もともとジャーナリストとは「日々の記録をつける人」というような意味だ。だからジャーナリストの目を手に入れるには、まず日記をつけてみるといい。

人は忘れやすい生き物だ。せっかく体験したことを、片っ端から忘れていく。たとえば、先々週の木曜日の夕食が何だったか、思い出せるだろうか。3週間前の月曜は、どんな会議に参加していた? たいていの人は、まったく思い出せないはずだ。

日記は、脳のバックアップ装置のようなものだ。誰かが言ったように、「どれほどすぐれた記憶力も、鉛筆一本にかなわない」。

私は10年前から日記をつけている。継続の秘訣は、書きすぎないことだ。いざ日記を始めるとなると、張り切って何ページも書いてしまう人が多い。すると2日目には気が重くなり、3日目には投げ出してしまう。そんなにたくさん書こうと思わず、「より少なく、より良く」書いたほうがいい。日記の習慣が根づくまでは、意識して減らすことが大切だ。

日記をつけたら、2〜3カ月ごとに読み返す習慣をつけよう。といっても細かいことは気にせず、大きな流れを把握するのだ。1日、1週間、1カ月で、あなたの人生に何が起こっただろうか。日々の小さな変化は見逃しやすいが、まとめて見ると大きな違いに気づくはずだ。

2. 現場を見る


「デザイン思考」を学ぶコンセプトで注目を集めるスタンフォード大学dスクールの学生だったジェーン・チェンは、「低価格デザインを考える」という授業に参加していた。そのときのテーマは保育器。1台2万ドル以上する保育器の値段を、100分の1に下げられないかというチャレンジだ。ジェーンはこう説明する。

「400万人もの未熟児が、生後28日以内に亡くなっています。安定した体温を保てるだけの脂肪がないからです」

さて、単に値段を下げるだけなら、安い材料で保育器をつくればいい。だが、本当にそれでいいのだろうか?

チェンとクラスメイトたちは、問題の本質を知るためネパールへ飛んだ。現地を取材してわかったのは、新生児の8割が病院でなく、自宅で生まれているという事実だった。ネパールの村落は電気が通っていないことが多く、たとえ保育器があっても使えない。

つまり本当の課題は、従来の保育器を安くすることではなく、電気を使わない保育器を開発することだったのだ。

この決定的な気づきを得た彼らは、問題の解決に全力で取り組んだ。やがて「エンブレイス」という会社を設立し、まったく新たなしくみの安価な保育器を発売するに至った。

お湯と保温ジェルを使った寝袋で、赤ちゃんの体を包み込むというものだ。保温効果は6時間以上つづき、温度が下がってきたらお湯を取りかえるだけでいい。

現場に足を運び、自分の目で問題をたしかめたおかげで、彼らは問題の本質を知ることができた。だからこそ、多くの命を救うすばらしい解決法を生み出すことができたのだ。
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