キャリア・教育

2020.08.22 20:00

カオスから本質を掴む4つの方法

Getty Images

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現代の職場はカオスだ。あらゆることを引き受けて忙殺される「非エッセンシャル思考」を捨て、“本当に重要なひと握りの事”だけに集中する「エッセンシャル思考」に転換する必要性は、誰もが感じているのではないだろうか。

だが、まずは、その“本質”を見極めることが難しいかもしれない。

ベストセラー『エッセンシャル思考』の著者、シリコンバレーのコンサルティング会社「THIS Inc.」CEOとして、エッセンシャル思考の生き方とリーダーシップを広めるべく世界中で講演、執筆をおこなってきたグレッグ・マキューンに、「本質を掴み取るための4つの技術」を教えてもらった。


ジャーナリズムの本質は核心を見抜くことだ


『めぐり逢えたら』や『恋人たちの予感』で知られる脚本家、ノーラ・エフロン。彼女が脚本家として大成功したのは、物語の本質をつかむ力によるところが大きい。ジャーナリストのキャリアで磨かれたスキルだ。だが彼女にもっとも多くを教えたのは、さらにそれ以前、高校時代の授業だった。

ビバリーヒルズ高校のジャーナリズム入門を教えていた、チャーリー・O・シムズという先生は生徒たちに話の要約を書くという課題を与え、次のようなストーリーを読み上げた。

「ビバリーヒルズ高校のピーターズ校長は今朝、職員一同に研修旅行の知らせを告げた。来週木曜、職員全員でサクラメントへ行き、新たな教育メソッドに関する会議に参加する。当日は人類学者のマーガレット・ミードや教育学者のロバート・M・ハッチンズ、カリフォルニア州知事のパット・ブラウンによる講演も予定されている」

生徒たちはタイプライターに向かい、いっせいに要約を書きはじめた。

「マーガレット・ミード、ロバート・M・ハッチンズ、ブラウン州知事は、教育会議に参加し……」

「来週木曜日、高校の職員一同はサクラメントで……」

シムズは生徒たちの要約に目を通してから教卓に置き、どれも駄目だ、と首を振った。そしてこう言った。

正しい要約は、「来週木曜は学校が休みだ」。

それを聞いた瞬間、エフロンはジャーナリズムの本質を理解した。

「ジャーナリズムとは、単に事実を繰り返すことではなく、核心を見抜くことだと気づきました。いつ誰が何をしたか、それだけでは足りません。それがどういう意味を持ち、なぜ重要なのかを理解しなくてはならないんです」

エフロンはそう言ってから、つけ加えた。「先生が教えてくれたのは、ジャーナリズムだけでなく、人生の役に立つ教訓でした」

あらゆる事実には、本質が隠されている。すぐれたジャーナリストは、情報の断片を調べ、それらの関係性を発見する。部分の集まりから全体像をつくりあげ、人びとに通じる意味を付与する仕事だ。単に情報を受け渡すだけなら、誰にでもできる。ジャーナリストの存在意義は、そこに本質的な意味を見いだすところにあるのだ。

話を聞いていて、ポイントを見失うことはないだろうか。情報量に圧倒され、何をどうすればいいかわからなくなることは? 依頼が次々と積み上がり、何からやろうかと途方に暮れることは? 重要なことをやり忘れていて、あとになって青くなったことはないだろうか?
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