彼は、雑多な物事に忙殺されないために、多数の瑣末なことのなかから少数の重要なことを見極めることが必要だという。
そのためには、誰にも邪魔されない時間が不可欠だというが、通勤時間やオフィスでの雑多な作業を排除できる「テレワーク」が進む今こそが、その時間を作り出すのに最適なのではないだろうか。
優良企業に選ばれた「カンバセーション」のフランク・オブライエンやビル・ゲイツが、どのように時間を確保していたかを見てみよう。
時間をとらなければ本質を見極められない
フランク・オブライエン、起業家。彼の創業したマーケティング会社「カンバセーション」は、ビジネス誌『インク』の選ぶ「アメリカでもっとも急成長をとげた民間企業」にランクインした優良企業だ。同社は慌ただしい世の中に対抗し、おもしろい取り組みをおこなっている。
月に一度、オブライエンは50名の社員全員を会議室に集め、丸一日の集中セッションを実施する。電話は禁止。メールも禁止。とくに決まった予定表はない。セッションの目的は、じっくりと考え、話し合うこと。これを月初めの月曜日、いちばん気持ちの引き締まる時期にやるのだ。社内だけでなく顧客にも周知し、第一月曜日は電話に出ないことを公言している。
なぜそんなことをするのかというと、落ちついて考える時間が必要だからだ。つねに電話を待っていたら、まともにものが考えられない。ときどき窓口を閉ざして、何が本当に重要なのかを検討しなくてはならない。オブライエンはこう述べている。
「ひと息ついて、まわりを見渡し、考える時間が必要なんです。それがなければ、イノベーションも成長も不可能です」
さらに彼は、このセッションが仕事の質のバロメーターになると語る。
「もしも『忙しすぎてセッションに出られない』と言う人がいたら、それは無駄な仕事が多すぎるんです。あるいは本当に、もっと人を雇うべきか。どちらかですね」
忙しすぎて考える時間もないなら、それは仕事が多すぎる。シンプルな理屈だ。
多数の瑣末なことのなかから少数の重要なことを見分けるためには、誰にも邪魔されない時間が不可欠だ。ただし、この忙しい世の中で、そんな余裕が自然に生まれるわけがない。あえて時間をとらなければ、誰も考える余裕など与えてくれない。
ある企業でマネジャーをつとめていた男性は、あと5年早く辞めるべきだったのに、と後悔していた。業務があまりに忙しすぎて、その会社にいるべきかどうかを考える余裕がなかったのだ。そのせいで、貴重な時間をずいぶん無駄にしてしまった。