ICUへの配置換えの場合、給与220%
大病院の役割分担が行われ、新型コロナ治療にあたる病院が、例えばストックホルム県ではカロリンスカ大学病院の他3病院と決められた。予定手術や治療は、可能な限り新型コロナ感染症治療を行わない病院へ委託された。カロリンスカ大学病院では、ICUのベッド数は5倍近くまで拡張された。
重症者は、地方自治体の枠を超えて、地方からストックホルムへ搬送された。ICU治療は、救える命を救うという方針により、80歳以下で基礎疾患のない患者は入室できるという基準が示されたが、ICUが満床となったことはなかったこともあり、個々の症例に関しては現場医師の判断に任されていた。
しかし、感染者が重症化し、ICU治療が必要となった場合、通常の疾患よりも遥かに長い期間のICU治療が必要となるために、常に十分な空きベッドがないと、救える命も救えない状況になってしまうため、感染収束が見えていない状況では、ICUの入室制限は必要なことであった。
治療に当たるスタッフも、配置換えや各種ボランティア、医学部最終学年の学生の動員や、休職状態にあるスカンジナビア航空のキャビンアテンダントを再教育し労働力をシフトするなど、多様でフレキシブルな対応がなされた。また、ICUへ配置換えするスタッフへのインセンテイブとして、通常の220%の給与を保証した。結果として、ICUが満床になることもなく、医療崩壊は起きなかった。
医療従事者のマスク着用は「手術時のみ」
スウェーデンでは、未だにマスクの使用が勧められてはいない。パンデミック発生当初は、マスクの感染予防や感染拡大防止に関するエビデンスはほとんどなかった。パンデミックを通して、マスクにある程度の効果があるとする報告が少しずつ出始め、WHOを始めとして多くの国がマスクを推奨するようになった。
しかしながら、マスクの意義に関するエビデンスが確立された訳ではなく、ソーシャル・ディスタンスを取ることが第一であることは、多くの専門家の意見が一致するところである。
今年3月、スウェーデンの教会の様子。マスクを着用している人としていない人がいる。(Getty Images)
8月3日のWHOの記者会見でも、マスクを推奨してはいるが、テドロス事務局長自ら「マスクは常に携帯し、ソーシャル・ディスタンスを取ることが難しい場合には使用するようにしている」。と発言している。同様にテグネル氏は、マスクをして慢心し、ソーシャルディスタンスを取らなければ本末転倒であることを強調している。
そういった事情から、公衆衛生庁はマスク使用を推奨することはしていない。病院においても、医療従事者は手術などの処置以外でマスクをしていない。日本から見たら、信じられない光景であると思う。