投資家向けソーシャルプラットフォーム「トレーディングビュー(TradingView)」のゼネラルマネージャー、ピアース・クロスビー(Pierce Crosby)は、2020年に入ってテック系大型株の株価が上昇しているのは、小口投資家の急増によるところが大きいと指摘する。
2月はじめの時点で、テック系大型株は市場をリードする存在とみられていた。だがその後3月に入ると株式市場は大幅に下落し、バリュー株が復活を果たした。これは、投資家たちが保有銘柄の入れ替えを行い、高成長型のテック系大型株を手放したためだと、クロスビーはみている。しかしここ数カ月、特に6月以降は、テック系の大型株が再び市場を牽引している。「勝ち組企業は、勝ち組であることを理由にさらに買われて価格が上昇するものだ」と、クロスビーは述べる。
一方、こうした市場の一極集中を投資家が不安に思う必要はまったくないとするアナリストもいる。クレディスイスのチーフ米国株ストラテジスト、ジョナサン・ゴラブ(Jonathan Golub)は、最近の投資家向けリポートにおいて、「幸いなことに、『市場の一極集中』は警戒項目のリストから外しても良いだろう」と記した。「最近は、懸念すべき事柄がたくさんある。新型コロナウイルス感染症の陽性件数の増加、世界第2の経済規模を持つ国(中国)との緊張の激化、財政赤字の急激な増大、増税の可能性などだ」
現在の時価総額上位5社がS&P 500種のなかで占める割合は22%。これは、ドットコム・バブル期に、上位5社(マイクロソフト、シスコシステムズ[Cisco Systems]、GE、インテル[Intel]、エクソンモービル[Exxon Mobil])が占めた「18%」を上回っている。だが、当時と比較しても現在の上位5社は堅調な利益拡大が見込め、S&P 500種全体の収益に対する貢献度も高いという。
現在の時価総額上位5社(アップル、マイクロソフト、アマゾン、グーグル、フェイスブック)を見ると、その株価収益率(PER)は平均で34.4倍だ。これに対し、ドットコム・バブル期だった2000年時点で、上位5社のPERは47倍近くに達していたと、ゴラブは指摘する。
とはいえ、注意が必要な点はないのだろうか。クリサフリはこう警告する。「(テック系銘柄の)バブルの膨張は止まったように思う。だが、今の問題は、これがしぼみ始める時期だ。重要なポイントは、テック系企業への資金の流入が途絶えた時、投資家が次にどこへ向かうかだ。今のところ、有力な代替候補は見当たらない」