画面越しだからこそ五感を駆使する。オンライン料理教室に感じた可能性

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自分が料理をしている様子を思い浮かべたとき、五感を使って情報をキャッチしているでしょうか。または、どうしてその作業をするのか? なぜ食材がそう変化するのか? 問いを持ったり、意味を理解しようとしているでしょうか。

多くの人は、レシピや作り方を頭に叩き込み、それを再現するために視覚情報に頼りがちなのではないかなと思います。おそらく参加者もそういう人が多かったのか、「味見だけじゃなく、色や音、香りや熱を確認しながら作業をすることで、自分の感覚が研ぎ澄まされた」「理屈も知ることができて腹落ちした」などの感想が寄せられました。

寄り添うことで「新しい価値」が生まれる


また、ある参加者から「オンラインで一緒に作る人がいると孤独ではないから楽しい」というコメントがあり、キッチンに立つということは、家庭においては孤独を強いられることなのかもしれないと改めて気づくことができました。ひと昔前の花嫁修行、親から子への伝承など、本来料理を共にすることは、食の大切なことを少しずつシェアする大切な時間ですが、現代社会ではそれが欠けているのかもしれません。



そんな現状に対し、オンライン料理教室はひとつの解決策になるかもしれません。これまで、自分の中で“料理のIT化”というアイデアはあまりなかったのですが、移動できないネガティブな条件下で始めた新たな挑戦に、多くの人のケアをできるポジティブな可能性を感じています。

このコロナ禍では、寄り添うことで新たな価値が生まれたり、これまでの価値を見直すことが気づきになったり……危機ではあるものの、チャンスを見つけた人、新たな火種や息吹を感じている人も多いのではないでしょうか。そうした小さな気づきや、それを見つけられた視点は、アフターコロナの社会の希望になり得ます。

日本の根底に息づく神道の世界では、神事に用いるために新しく鑽(き)り出される清浄な火のことを「忌火」と言います。寄り添うことで生まれた気づきは、これに近いのかもしれません。それを尊び大切に育めるよう、日々精進しなければと思います。

連載:喰い改めよ!!
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文=松嶋啓介

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