画面越しだからこそ五感を駆使する。オンライン料理教室に感じた可能性

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2020年の上半期、コロナ禍においてリモートワークが推奨され、ZoomやMicrosoft Teams、V-CUBEなどのウェブ会議システムが普及し、スローペースだった「働き方改革」が一気に進みました。

また、ウェブ会議のシステムは仕事だけでなくプライベートにも活用され、“オンライン飲み会”も浸透し、画面越しに楽しげに飲む画像がSNSを賑わせています。

意外と相性のいい「オンライン料理教室」


そんななか、南仏ニースでロックダウン中の僕は、どうせなら飲み会以外の使い方も……と、「オンライン料理教室」を始めました。自粛により家で料理をする人が増えていたことも理由の一つです。地球の果てでも繋がれるオンラインという空間を利用して、日本だけではなく、世界中の友達を巻き込みながら実施しています。

パンデミックの前までは、日本に帰国した時にデモンストレーション形式の料理教室を開催していましたが、オンラインで料理教室というのは未経験。初の試みで、Zoomの使い方から調べることになりましたが、コロナ禍は失敗を恐れないマインドも与えてくれていたので、気軽にトライすることができ、今では定期開催するほど好評を得ています。

移動ができなくなったからオンラインなのですが、この形式だと、参加者は自分の慣れたキッチンで料理ができるし、僕はまるでお宅訪問をしているかのように指導ができるので、「この方がいいかもしれない」と思うほど、料理教室とオンラインの相性の良さに驚いています。



この料理教室では、まず、僕がコロナ禍で始めたユーチューブのレシピ動画を見て、大体の作り方のイメージをしてもらいます。そして、当日は材料を揃えて参加してもらい、僕が画面越しに、皆さんが作っている様子を見ながら指示を出していきます。これは、店でスタッフを指導するのに似ているかもしれません。

五感を駆使して料理をする


会が始まる前には、参加者にひとつ大事なことを伝えます。それは、画面越しでは、僕にハンディキャップがあるということ。湯気の香りを嗅いたり、材料に熱が入っていく音を聞いたり、味見をしたりすることができないため、その五感を受講者に委ねるので、それぞれ自らのフィルターで情報を確認を欲しいと伝えています。

そして、料理中は「鍋の中の香りを嗅いでください」「味見してみてください」と何度も投げかけて、互いに情報をシェアし、助け合いながら作っていきます。
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文=松嶋啓介

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