ブランドの付加価値の創造においては、オリジナリティこそが生命線であり、それはグッドビジネスにもつながる。いくつか例を挙げてみよう。
まずは、アイスクリームのハーゲンダッツだ。1984年の登場からあっという間に「プレミアムアイスクリーム」としての地位を占めた。
しかし、ハーゲンダッツ以前は、アイスクリームとは子供のおやつ程度のポジションであったことは、現在40代後半以上の人ならわかると思う。
ハーゲンダッツ以前のアイスクリームの王者はレディボーデンで、CMなどもファミリーで食べるというイメージで売っていた。1カップは、100円前後の価格帯だった。
そこに、ハーゲンダッツは、倍以上の価格で参入した。そして「大人のアイスクリーム」という意味付けをした。子供向けvs大人向け。かくして後者には、「本物」「美味しい」「高級」「お洒落」「都会的」「洗練された」という子供向けにはない世界がこれでもかと付け加えられていく。
品質は、実際のところ、レディボーデンとハーゲンダッツの成分は、乳脂肪分や無脂乳固形分などに大差はなく、あえて言えばレディボーデンは北海道産乳でつくられており、プレミアム性でも劣らなかったらしい。
とにかくハーゲンダッツは、ヨーロッパのどこかで生まれたのではないかと思わせるネーミングも絶妙であった。
実のところ、ハーゲンダッツはアメリカのメーカーである。アメリカのスイーツにはどのような印象があるだろうか。当時でも「太る」「大量」「大味(繊細ではないという意味)」「甘すぎる」というネガティブなイメージは、いまと変わらなかったと思う。それを、ネーミングによって遠ざけることで、その地位は不動なものとなり、現在を迎えている。
このように、「国のイメージ」もブランド構成の大きな要素となる。時計がスイス製であることは、精密機械に信頼性のない国のものと比較すれば、購買への影響力は絶対的だ。いちいち、時計個体のスペックなどを細かく比較する以前に、どこの国製かで判断してしまう。そのことをハーゲンダッツは明確に理解していたのだ。
USJとTDRの戦略はどう違うか
もうひとつ、例を見てみよう。いまから15年ほど前に、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が集客で苦戦しているとき、ある代理店から「あるべき姿」を可視化して欲しいという依頼を受けた。
当然、当時の最大のライバルは東京ディズニーリゾート(TDR)である。
USJの持つデータで特に興味を引いたのは、来場者がTDRに入園してからシンデレラ城を見た瞬間の感動が帰るまで、いや帰宅後までも続くという、この体験が血肉になるという感覚がある、というものだった。
かたやUSJでは、入園時にユニバーサル・グローブを見た瞬間はテンションが上がるが、ものの1〜2時間でその感動は醒めてくる、飽きるというものだった。