谷本:リアル世代ほど、オンライン化を誤解しがちなのかもしれないですね。「リアルで会わずにビデオ会議」と聞くと、それだけで人の温かみがなくなると思ってしまう。人間味がオンラインによって削ぎ落とされてしまうのではないかと思いがちかもしれません。
尾原:逆ですよね。実際、僕と谷本さんが最初に会ったのはオンラインで、僕はバリ島からロボット越しにご挨拶させてもらいました。しかも、あの頃の谷本さんはまだWeb編集長に就任されたばかりで、お互いの肩書きもよくわかってなかった。
でも、世界をどう変えていきたいか、世界の最前線の情報をどう読者に伝えていくか、意見が一致したんです。お互いの価値観が似ていることが、画面越しでもよく伝わってきて、そこから今に至るわけですよね。
谷本:私たちがリアルで会ったのは5回もないですよね。年に1度くらい。
尾原:それでも、連載を続けたり、互いに縁を紡ぎあったりと、たくさんの化学反応が起きましたよね。つまり、人柄とか相手の温かみであるとかは、リアルでもオンラインでも関係なく伝わるもので、伝わるように工夫すればいいだけだと思います。
相手の“ペインポイント”を理解する
谷本:新著で尾原さんは、「相手にギブすることで、何者かになっていく」と書かれていますが、それに関連して読者から質問がきています。「相手の好きを見つけるコツは何ですか?」と。たしかにこれは難しいように思いますが、いかがでしょう?
尾原:まず、僕が考える最強の“ギブ”は、相手の描く「なりたい自分」を手助けする何かだと思うんです。例えば、相手がイラストレーターになりたいと思っていたら、それを実現するための知恵やツールやご縁を分かち合えれば、それは相手にとっても嬉しいことじゃないですか。
でもほとんどの場合、「なりたい自分」は本人にとっても曖昧なはずなんです。だから、相手と併走しながら「どこに行くか」を予測して、その先で必要になるものを提供するのが、喜ばれるギブだと思っています。
相手がどこに行くかは、「どこから来たか」を見れば見当がつきます。だから僕は好きな相手の歴史を勉強します。ありがたいことにインターネットには、インタビュー記事とか本人のSNSとか、手掛かりになる情報が転がっています。
普段の会話のなかでお互いのルーツや過去の話になったら、それをしっかり覚えておくことも大事です。どんな過去を経てきたかが分かれば、どんな未来を求めているかを知る手がかりになる。すると、どうサポートしたら喜ぶかもわかってくるんです。
本にも書いたんですが、僕は毎日20人に、本人が必要としてるであろう「ほんのちょっと先の情報」を、ニュース記事とかで見つけて送っています。スルーされることもあるけれど、響けば「ありがとう!」と返事が返ってくる。反応の有無や内容で相手の今がわかるから、その人へのギブは自ずと研ぎ澄まされていきます。