多くの都市や地域、街では、音楽戦略が策定されているところです。具体的には、経済発展や観光、包摂的な成長等、コミュニティに包括的な利益をもたらすものとして、音楽が着目されています。フランスでは、各地域に音楽がもたらす影響を調査すべく、国立音楽センターの設立が進んでおり、中でも最も積極的に活動しているロワールでは、音楽分野の経済的価値に関するデータを収集しています。
アメリカでは、長年音楽政策を実施してきたナッシュビルとオースティンを別にしても、24の都市がミュージック・アーバニズムを積極的に実践しています。ニューオーリンズでは、地元のミュージシャンのために知的財産の価値向上を目指す、NOME(ニューオーリンズ音楽経済プロジェクト)が始まりました。インディアナ州インディアナポリスでは、市の戦略として、地元のミュージシャンの地位向上、観光の促進、インバウンド投資の増加に注力しています。
ニューヨークではこの春、女性ミュージシャンを支援するための取り組みが始まりました。ロンドンでは、文化的インフラへの支援をより優先して充実させるために、都市計画法が変更され、音楽会場の相次ぐ閉鎖と闘っています。音楽政策を実施しているメルボルン、シドニー、ブリズベン、アデレードでは、市議会の中に音楽政策担当オフィスが初めて設けられました。成都は、新たな音楽街と14のコンサートホールの新設を含む、包括的な成長戦略を打ち出しています。
世界中の多くの大都市が、国連教育科学文化機関(UNESCO)と提携して音楽都市となり、地方行政における音楽の役割を拡大させるべく取り組んでいます。ミュージック・シティズ・ネットワークという別の団体も存在し、情報やベストプラクティスの共有を中心とした活動を行っています。
コロラド大学デンバー校、メンフィスのビジブル・カレッジや、オーストラリアのモナシュ大学では、音楽都市に関するコースを開講しています。音楽都市とミュージック・アーバニズムに関する初めての学術書、「The Great Music City(偉大な音楽都市)」(アンドレア・ベイカー著)も今年出版されました。