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地方発イノベーションの秘訣

住民から返送されてきた申請書

全ての国民に10万円が支給される「特別定額給付金」は、人口の多い大都市などでは、支給までに時間がかかっている。

約152万人の住民が暮らす神戸市では、対象となる世帯が76万4063件。5月1日からオンライン申請、14日から郵送での申請書の送付を始め、5月18日に初めての振込を行った。とはいえ、6月9日までの22日間で完了したのは、3万5988件に過ぎなかった。

ところが、6月10日、たった1日で7万4560件という大規模な振込を行った。さらに、11日以降も1日約4万5000件のペースで振込を続けている。

このような大量の処理は、どのように実現したのか。神戸市の特別定額給付金担当課長の浦川稔弘、給付金事務の委託先であるパーソルテンプスタッフの藤原理絵に、その舞台裏を聞いた。


神戸市の特別定額給付金担当課長の浦川稔弘、パーソルテンプスタッフの藤原理絵

オンライン申請に問題あり


浦川はまず「個人単位のマイナンバーカードを世帯単位の給付金に使うのに無理があった」と振り返る。給付金は、4月27日現在の住民基本台帳での世帯主に、その世帯の人数分が支給される規定となっている。ところが、マイナンバーカードには世帯主か否か、何人の世帯かが記録されていないのだ。

そうなると、世帯主でない者が申請してきたり、住民票では世帯を分けている二世帯住宅に住む家族がまとめて申請してきたり、あるいは別居している高齢の両親の分まで一緒に申請してきたりするケースが続出した。

あまりに規定外でも申請できることから、浦川と藤原は、オンライン申請を「自由帳」と呼んでいる。多くの自治体がオンラインを途中で中止したのは、これが理由だ。間違った申請は、膨大な作業増加につながるのだ。

一方で、郵送申請は、世帯主にしか申請書が届かない。さらに、住民基本台帳での世帯人数があらかじめ印刷されているので、間違えようがない。5月1日にはじまった「自由帳」申請の実態を知った浦川は、一刻も早く、郵送申請をスタートするべきだと強く感じたという。

少し時間を巻き戻す。4月20日の「特別定額給付金」の閣議決定から3日後に神戸市の特別定額給付金担当課長に指名された浦川は、事業を委託するパーソルテンプスタッフの藤原と話をした。

神戸市は2009年、国民1人当たり1万2000円(65歳以上と18歳以下は8000円を加算)を世帯単位に支給した「定額給付金」でも、同社と契約していた。また、現在も神戸市の保育所の無償化申請などを委託している。

自治体が給付金支給のような業務を外部に委託するには、公募の競争入札で契約先を選ばなければならない。だが、そんなことをしていれば契約まで1カ月以上はかかる。今回の特別定額給付金では、緊急を要するという理由で、地方自治法施行令の規定により、任意に選んだ事業者と「随意契約」することが認められていた。そこで神戸市は、11年前のノウハウを持ち、市の事情にも精通したパーソルテンプスタッフを選んだ。

文=多名部重則

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