これはエジプトのLGBTQ活動家のサラ・ヘガジさんが、6月13日に自殺する前に書き留めた最期の言葉だ。ヘガジさんはカイロで行われたコンサート中にゲイプライドを表明するレインボーフラッグを掲げたことを理由に警察に逮捕され拷問を受けていた。エジプトから亡命したカナダにて、彼女は30歳の若さでこの世を去った。
Egyptian LGBT rights activist Sarah Hegazy has taken her own life in exile.
— DW News (@dwnews) June 15, 2020
In her final note, she wrote: "To the world - you were cruel to a great extent, but I forgive." pic.twitter.com/XxJz9bR53y
ヘガジさんはなぜ拷問され死へと追い詰められねばならなかったのか。エジプト社会では一体なにが起きているのであろうか。
エジプト・カイロでおきたレインボーフラッグ事件
2017年9月22日、ヘガジさんはレバノンのバンドMashrou’ Leilaが出演していたカイロでのコンサートに参加していた。同バンドのボーカルであるHamed Sinnoはゲイを公表しているアラブ系アメリカ人として知られており、会場の人々はLGBTQの権利を主張する手段としてレインボーフラッグを掲げていた。
保守的なイスラム教社会として知られるエジプトでは、同性愛は明確に違法とはされていないものの、LGBTQの人々が「放蕩」など婉曲的な容疑で逮捕されている現実がある。またアメリカのシンクタンク「Pew Research Center」の2013年の調査によれば、エジプト人の95%が同性愛は社会的に受け入れられるべきではないと信じているという。
会場でヘガジさんがレインボーフラッグを掲げている写真がソーシャルメディアを通じて出回ると、彼女には脅迫など憎悪に満ちたコメントが殺到した。また保守的なエジプトメディアもこれに反応し、テレビ司会者のアーメド・ムサは「この放蕩は恥であり犯罪だ」と主張。政府に早急な措置をとるように促した。