精度の高い睡眠記録と、ユーザー思いの目覚まし機能
Appleが設計した新しい睡眠記録の機能は誰もがシンプルに使える、親しみやすいものになりそうだ。
ヘルスケアアプリから就寝・起床時間を設定して「眠りたい時間」を目標としてゴールに定める。就寝中はApple Watchに内蔵する加速度センサーが活躍しながら、ユーザーの寝息のリズムや寝返りなど睡眠時に特有の動作を、Apple独自の機械学習モデルとマッチングさせながら正確に識別して、ユーザーが眠っている時間を記録する。呼吸の強弱まで細かな動作が認識できるそうだ。
そして起床時間を迎えると、Apple Watchが穏やかなサウンド、または触覚フィードバックで手首に振動をやさしく伝えて目覚めに導く。睡眠の記録はApple Watchの画面で確認できるほか、iPhoneのヘルスケアアプリから過去2週間ぶんの睡眠記録をグラフや数値化されたデータを見ながら振り返られる。
起床した時にはApple Watchの画面にバッテリーの残量を表示。出かける前にチャージが必要か判断できる。
いま巷にあるスリープテックデバイスの中には睡眠の質を「スコア」に変換して、ユーザーに見せる機能を特徴にうたうものもある。リンチ氏は「Apple Watchによる睡眠記録は、できる限りシンプルでクリアな体験を目指した」としている。
スコアリングなどの要素を持ち込むことで新たな達成目標や情報が増えて、質の高い睡眠を求めるユーザーに心配事を増やす可能性もあると考えたことから、これを設けなかったようだ。アップルの新たな睡眠記録機能の名称は、英語ではシンプルに「Sleep」である。それが十分な睡眠を得るための包括的な機能で、ユーザーにどのようなメリットをもたらしてくれるものであるのかが、最もシンプルでわかりやすく伝わるネーミングではないだろうか。
ベッドに入る前の「就寝準備」により眠りの質を高める
watchOS 7では、ユーザーが良質な睡眠を得られるように「Wind Down=就寝準備」と名付けられた機能が使える。ユーザーが抱える“眠れないことへの不安感”をできる限り取り除くために、この機能が設計されたという。
ヘルスケアアプリで設定した就寝時刻の少し前に、iPhoneのロック画面が穏やかな明るさに変わり、ユーザーに就寝準備の開始を促す。「ホーム」アプリを使って部屋のスマート照明の明るさを落としてから、リラックスできる音楽を聴いたり、お気に入りの瞑想アプリを実践したり。深く心地よい眠りを獲得するための近道となり得る、就寝前のルーティン(習慣動作)をApple Watchが指南してくれる。
就寝時間が迫ってくると、iPhoneの画面が就寝準備のモードに切り替わる。
就寝準備のためのショートカットが揃う。
リンチ氏は、アップルウォッチのアクティビティやヘルスケア機能など、コーチングの要素を持つ機能については最も効果的なコーチングの姿を形にすることを意図していると話す。「特に睡眠機能では“前向きな支援”というアプローチから、ユーザーをやさしく励ますようなコーチング体験をデザインしている。睡眠不足を実感されている多くの方々へシンプルな方法で、日々穏やかに眠りに就きながら、十分な睡眠時間を確保できるように手助けする機能だ」。