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広場から撤去されたエドワード・コルストン像(Getty Images)

アメリカの黒人差別に対する抗議デモが大西洋を超えて欧州にも飛び火し、人種差別的な歴史を想起させる記念碑の撤去を求める運動が活発化している。イギリス南西部のブリストルでは6月7日、デモ隊が17世紀の奴隷商人エドワード・コルストンの銅像をロープで引き倒し、港に投げ込むという出来事があった。

ロンドンでも9日、18世紀にジャマイカで奴隷貿易に携わっていたスコットランドの商人・ロバート・ミリガンの銅像が撤去されている。反対にイギリス南部の港町ボーンマスでは11日、「スカウト運動」の創始者でナチス・ドイツの支持者でもあったロバート・ベーデンパウエル卿の銅像を撤去する方針に抗議する人々が、銅像のもとで集会を開く騒動もあった。

ブリストルといえばバンクシーの故郷である港町であり、グラフィティなどのストリート・カルチャーが根付いている地域だ。イギリスで頻発している銅像撤去を求める運動の中でもブリストルは先がけて大きなうねりを生み出したが、銅像が破壊されることによって新たなる衝突が生まれることを懸念する意見もあるだろう。現在までにブリストルやイギリス国内ではどのような議論が巻き起こっているのであろうか。またエドワード・コルストン像は港へと捨てられたその後どうなったのだろうか。



銅像を公共の広場に設置する必要はあるのか


イギリスのボリス・ジョンソン首相は6月12日、元イギリス首相のウィンストン・チャーチル像に「人種差別主義者」と落書きされた件についてSNSでコメントを投稿。元首相の差別的な発言については「現在では受け入れ難いものもある」とする一方、「英雄の記念碑が攻撃されるのは恥ずべきことだ」「銅像は過去の歴史を欠点とともに教えてくれるもので、撤去することは歴史に嘘をつき次世代の教育の機会を減らす」と批判している。

負の部分をも含めて正しい歴史を未来へと繋いでいかねばならないという理念には賛同できる一方で、差別主義的な歴史的人物の銅像を公共の場に設置することがその目的に適っているのかについては疑問の声もあるだろう。ブリストルの人々からはどのような意見が出ているのだろうか。

ブリストル出身の音楽ユニットであるマッシヴ・アタックは、エドワード・コルストン像が反人種差別の抗議者によって撤去されたことを歓迎し、次のようにツイートした。「ようやくだ。エドワード・コルストンの銅像は公共の場の記念碑になど決してなるべきではなかった。博物館だったら考えられたかもしれないけど」

銅像などの「記念碑」は、そもそも公共的な記念の目的から特定の人物や事件などを長く後世に伝えるために設立されるものだ。もし今回撤去された銅像の重要性が「過去の歴史を欠点とともに教えてくれる」という教育的な価値にあるならば、鑑賞者が誤解を抱かぬよう、詳しい解説とともに展示できる博物館の方がその目的を達成しやすいようにも思える。

不特定多数が利用する広場など、公共の場に銅像が設置されるのであれば、博物館における展示よりも一層「公共性(publicness)」が重要視されるべきだ。ここでいう「公共性」とは、国家に関係する「公的なもの(official)」という意味ではなく、全ての人々に関係する「共通のもの(common)」という意味である。

文=渡邊雄介

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