経済・社会

2020.06.19 07:30

人種問題に珍しくコメント。「バンクシー」作品を写真で振り返る

2005年、イスラエルの分離壁に描かれた「Balloon Debate」。

2005年、イスラエルの分離壁に描かれた「Balloon Debate」。

イギリスを拠点に、匿名で活動するアーティスト、バンクシー。

2003年にはロンドンのテート・ブリテン、2004年にはパリのルーブル美術館、2005年には、MoMAやアメリカ自然史博物館などNYの4つの美術館と博物館に、無断で作品を展示したことから、「芸術テロリスト」とも称される。

そして2020年、自身のインスタグラムで、コロナ危機や黒人差別問題に対する強いメッセージを込めた作品を発表し、世界中から注目を集めた。バンクシーの社会風刺や、政治的メッセージを込めた作品を改めて振り返る。


@banksy 6月6日、作品とメッセージ、全3枚の画像が投稿された

「初めはこの問題について発言をせず、黒人たちの訴えにただ耳を傾けているつもりでした。では、どうして声を上げることにしたのか。なぜならこれは彼、彼女たちの問題ではなく、私たちの問題だからです。社会システムによって有色人種の人々は生活がしにくくなっています。つまり、白人たちの社会システムです。

まるで、水道管が壊れたマンションの、下の階の住民たちが被害を受けているようです。彼、彼女たちは壊れたシステムのせいで苦しみながら生活をしているのです。でも、これは彼らが解決すべき問題ではないんです。だって彼らは上の階に行けない、というより、入れてもらえないのだから。

これは白人の問題です。もし白人が解決しなければ、誰かが上の階に行って、ドアをこじ開けるしかないないんです」


@banksy 

2020年5月、「Game Changer」と一言添えて、自身のインスタグラム上で公開した作品には、 真のヒーローとは空想上のヒーローではなく、自らの命をリスクに晒しながらも、最前線で新型コロナウイルスと闘いを繰り広げている医療従事者の人たちである、というメッセージが込められている。

イギリスの国営医療制度(NHS)で働く人々を称えるため、南イングランドにあるサウサンプトン総合病院の院内に飾られている。


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フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」をモチーフにした、2014年の作品「The Girl With A Pierced Eardrum(鼓膜が破れた少女) 」。

2020年の4月にマスクが加えられたが、本人が手がけたかどうかは不明。医療従事者を応援するバンクシーのメッセージでは、という声が多く上がっている。



イギリス政府がロックダウンを延長し、5週目に突入した2020年4月下旬に描かれたとされる作品。

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2017年の「イギリス人が好きな芸術作品」ランキングで第1位になったバンクシーの代表作「Girl with Balloon(赤い風船に手を伸ばす少女)」。2002年からロンドン市内の壁に描かれ、その後は、それぞれの場所や社会背景を反映してアレンジしたものが、世界各地で出現した。

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2018年、「サザビーズ」で約1億5500万円で落札された直後にアラーム音が鳴り響き、額縁に仕込まれていたシュレッダーが作動して、作品の下半分は裁断された。

バンクシーは自身のインスタグラムに、作品が裁断されている瞬間の動画を投稿。「破壊の衝動は、創造的でもある」というピカソの言葉を添えた。動画内では、「オークションにあたり、数年前から作品の中にシュレッダーを潜ませていた」と明かした。

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2020年のバレンタインデーに合わせて、イギリスのバートン・ヒル地区の建物に描かれた作品。タイトルは発表されていない。少女が発射するパチンコによって、赤いバラの花びらが飛び散っているように見える。

この作品は2日後に破壊されたが、バンクシーはそれについて自身のインスタグラムの投稿で言及。「バートンヒルに残した作品が破壊されて、どこかほっとした。はじめのスケッチの方が断然良かったんだ」というキャプションとともに、オリジナルのスケッチをインスタグラムに投稿した。

元のスケッチは、代表作の「Love is in the air(愛は空中に)」で描かれた人物に酷似している。

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2003年、パレスチナのベツレヘムの建物に描かれた「Love is in the Air」は、パレスチナ問題に焦点を当てた初期の作品であり、代表作。

抗議者の象徴と言われているが、男が投げているのは色とりどりの花束である。この作品は2006年、ロサンゼルスで開かれた大型展覧会「Barely Legal」でも展示された。


@banksy 

2020年6月、自身のインスタグラムに投稿した最新作。

イギリス・ブリストルで行われた黒人差別に抗議するデモの最中に、17世紀の奴隷商人として富を築いたエドワード・コルストンの銅像が倒されたことに対して、
バンクシーは「銅像がなくなって欲しくなかった人も、そうでない人も満足する案」を提示した。

「まず海から銅像を引き揚げて、台座に戻す。首の周りに縄をくくり付け、それを引っ張り、銅像を倒そうとしている抗議者たちの像も配置する。これで皆が納得してハッピーだし、記念にもなる」と説明した。

文=初見真菜 写真=Getty Images

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