ポストコロナの最先端を走るUAEの「快適生活」と「対中関係」

ドバイの街並み(筆者撮影)


ハイテク国家UAEにとって、5Gネットワークは非常に重要な分野だが、UAE初の電気通信事業会社、エティサラート社は中国のファーウェイと5Gネットワークの導入に合意。筆者の携帯もこの6割政府所有のエティサラート社と契約している。先述のムハンマド皇太子からのメッセージは、この携帯番号を通じて送られてきたものだ。

さらに、中国の会社が開発した人気動画アプリ「TikTok」は中国に個人データを送信している疑いが指摘されているが、アブダビ経済自由地区を拠点にする会社が配信している「ToTok」というメッセージアプリも大量監視ツールだと言われている。

米ニューヨークタイムズは昨年末、ToTokの配信会社のバックには、アブダビ拠点のサイバーインテリジェンス・ハッキング企業DarkMatterがおり、諜報関係者を雇用していると報道した。Totokの前身となるアプリを開発したのは、先述の大規模検査ラボを建設した会社Group42で、DarkMatterグループとも密接な関係にある。


2019年12月、モスクと近代ビルが混在するアブダビの街並み(筆者撮影)

UAE政府は「あらゆる情報漏洩と不法な傍受を禁じている」と否定しているが、「ToTok」はファーウェイの宣伝により世界に広く浸透した背景がある。Google Playやアップルストアでの配信は禁止されたが、中国のサイトでならいまもダウンロード可能だ。

そのほか、新型コロナ対策としてUAEの警察が熱探知などでコロナ感染者を早期発見するために導入したスマートヘルメットも中国製だ。国家消毒プログラム中に消毒用や広報用にドローンが利用されたが、UAEでは軍事・商用双方に中国製のドローンが広く使われている。UAEが支援しているコロナ蔓延期のがん患者治療に関する研究では、中国・湖北省も含めた各国からデータを集めており、研究の参加者の中に武漢大学中南医院の教授も名を連ねている。

2019年に設置が発表されたUAEの目玉政策「AI大学」の第1回評議会には、UAEで大量検査施設を作ったGroup42の中華系CEOが呼ばれ、教授陣の3分の1以上が中国人だ。AI大学設立を報じた中国人民日報系の環球時報の記事では、技術の商業化や製品化を得意とする中国と、資金力のあるUAEの協力への期待が言及されていた。

砂漠の部族や、真珠採りや漁業を営む人々が牧歌的に暮らしていたUAEは、1971年に建国された若い国だ。建国以来、時代の最先端のアイデアを取り入れることで国家として成長してきた。先端技術導入の音頭をとる王族はもちろん、誰もが未来を見据え貪欲に学び、先取りし、進み続けることの重要性を認識している。

世界の先端を目指しトップダウンで物事を動かしていくUAEと中国。先端技術をめぐる両者の関係や具体的な取り組みについては、AI大学設置を中心に、別の機会に記述したい。

文=本田 圭

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