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経済・社会

2020.06.16 17:00

韓国だけか?「権力はYouTubeでずっこける」


韓国の世間では最近、様々な「対立」が増えている。昔は、豊かな東側の慶南地方(慶尚道)と貧しい西側の湖南地方(全羅道)という対立くらいだったが、最近は富裕層と貧困層、男性と女性、若い世代と年配の世代というように、いろいろな対立がある。例えば、ジェンダーが社会的に大きく取り上げられ、セクシャルハラスメントへの厳格な対応や、男女の雇用機会均等の推進などが叫ばれているが、若い男性たちからは逆に「俺たちは軍隊にも行かなきゃいけないのに、なんで女性ばかり優遇されるんだ」という不満の声をよく聞く。

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韓国の秋美愛法相

文在寅政権は、朴槿恵政権を「側近と国政を壟断した」と攻撃し、政権の座に就いた。「民心に寄り添う政権」というのがキャッチフレーズだ。だから、世論の動向には神経を遣ってきた。韓国の情報関係筋によれば、韓国大統領府は、文在寅政権を支える主な勢力である586世代(50代で、大学の学籍番号が1980年代の、60年代に生まれた人々)を若者世代が研究した書籍などを必読本にしている。大統領府のホームページに、国民請願コーナーをつくり、そこに寄せられた声に迅速に対応することで「民意を反映している」とも主張している。

しかし、それで十分だろうか。国民請願コーナーでは、最近でも新型コロナウイルス対策を巡って、文在寅大統領の罷免を要求する請願が行われた後、逆に文大統領を応援する請願も行われた。韓国政界筋は「結局、請願コーナーは政治的に利用されている。賛成も反対もそれぞれ組織票があるため、純粋な民意とは言いがたい」と語る。統一省や法務省がつくったユーチューブが批判されている状況などを見る限り、文政権は韓国で生まれている、様々な対立や葛藤をうまくすくい上げているとは必ずしも言えないだろう。

もちろん、それは韓国だけの問題ではない。日本でもよく言われているように、安倍政権が最近、アベノマスクや安倍晋三首相の優雅に見えてしまう自宅生活を伝えるツイッターで炎上した。トランプ米大統領も新型コロナウイルス問題や黒人差別の問題などで、自分に都合の良い解釈を発信し続け、多くの批判を浴びている。

結局、為政者にせよ経営者にせよ、国民や社員の感情や視線を無視した行動は御法度のようだ。金錬鉄統一相が部下たちと一緒に歌ったのも、秋美愛法相が少年院の収容受刑者と新年のあいさつを交わしたのも、統一省の職員や収容受刑者らが熱望して実現した行動だったとは誰も思わないだろう。安倍首相の自宅でくつろぐ姿、トランプ大統領の一連の発言も、新型コロナで生活に不安を抱える人や、米国の黒人たちが望んで実現した行動とはとても言えない。

リーダーは下の人間の声に耳を傾け、その意味を正確に理解して、初めて支持される。ポピュリズムに走らないよう、リーダーが見識をもって判断することは構わないが、いずれにしても謙虚な姿勢は必要だろう。SNSには、そんな当たり前のルールをはっきりさせてくれる力もある。

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文=牧野愛博

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