危機感がないと淘汰される 三ツ星シェフが業界に送るメッセージ

HAJIMEの米田 肇シェフ

コロナ禍の余波は、様々な業界に及んでいるが、なかでも飲食店への打撃は計り知れない。その苦境に果敢に立ち向かっているのが、大阪で三ツ星レストランを営む米田肇氏だ。

氏が飲食業界の異変に気付いたのは、去る2月17日。レストランガイド「ゴー・エ・ミヨ」の授賞式のために、東京を訪れたときのことだという。京都や東京の名店から、インバウンドのゲストが減って困っているという声を多く聞いた。実はHAJIMEでは、昨年秋に米田氏が「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演して以来、インバウンド中心だったそれまでの客層がガラリと変わり、日本人の客で予約が埋まっていたため、気づくのが遅れたというのだ。

そうこうするうちに、2月になると、若い店主や料理人からの相談件数が格段に増えた。米田氏は、週に2~3回、フェイスブック上で、料理人としての心構えや、ぶつかるであろう壁の乗り越え方などを、心に響く長文で発信している。そのため若き料理人や経営者から、週に20~30の悩み相談が寄せられる。その中には、このままでは店がつぶれてしまう、コロナ禍を乗り越えられそうもないという、悲鳴にも似た叫びが多く含まれていた。

これはなんとかしなければ、日本の宝であり、観光のキーコンテンツである飲食店の多くを失ってしまうことになる。自分にできることは何なのか、と真剣に考えた。

米田氏は言う。

「こういう有事には、政府の上層部に働きかけるトップダウンと、下支えする声を多く集める、二方向からの訴求が必要です。これまでのすべての人脈をたどって、菅官房長官、世耕幹事長などに行きつくことができました。

飲食店は、営業しようがしまいが家賃が発生する。また、営業するからには、食材を発注しなければならない。大方の店では、4月の材料費は、4月末締めで、5月末締めのものは6月15日に、待ったなしの請求書が送られてくる。それが支払えるか否かで店の運命が決まってしまう。だから、なんとしてでも家賃保証と、給付金が必要なのですと、懇願しました。幸い、署名は5万、10万、15万と、迅速に集まりました。世論も追い風となり、一料理人の言葉に耳を傾けてくれるようになりました」


政治家との会合にて

以下は米田氏のフェイスブックからの引用だ。


『家賃補償予算成立までの日程について』(5月19日)

5月も過ぎ去り、もうすぐ6月です。色々と補償関係の情報が出てき所からまた時間が経ってしまい、検察庁法改正案などの話があったりして、みなさん、家賃補償がどのようになっているか不安になり、気にされていると思います。私もです。

本日、世耕幹事長にお聞きしましたので、その内容をお伝えします。今後の国政のスケジュールですが、家賃補償、雇用調整助成金上限アップ等他の施策と合わせて、以下となる予定です。

5月21日 党方針決定
5月27日 政府が二次補正概算閣議決定
6月8日 二次補正予算案国会提出
6月21日 衆参で審議の上、補正予算成立→執行

正式確定ではありませんので、おおよその進み具合として今後の計画の考慮としてください。

とにかく、政府の進むスピードが遅く、泣く泣くお店を廃業する選択をされた方もいらっしゃると思います。上のスケジュールをベースに計画をしていってください。なんとか多くのお店が生き残ることを心から祈っています。頑張りましょう!
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文=小松宏子

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