6月8日に都内で開かれた記者会見では、伊藤さんと代理人弁護士の山口元一さんらが出席。伊藤さんは、2017年に顔を出して自らの性被害を訴えた頃から「誹謗中傷だけでなく、『死ね』や命の危険を感じる言葉が日常生活の中で耳に届くようになった。昨年12月までは性暴力についての民事裁判の一審にエネルギーが取られ、このような裁判を起こすのは精神的に難しく、心理的なハードルがあり、3年という時間がかかってしまった」と明かした。そして今回の提訴についての思いをこう語った。
「苦しいことを乗り越えていくことは本当に難しい。被害にあったことを乗り越えるのではなく、傷とともに生きていかなければならない。このようなことは私たちの世代で終わりにしたいのでアクションした。(SNS上の誹謗中傷の)被害を受けた時にアクションしやすいような環境づくりをしていきたい」
今回の提訴に至った思いを語る伊藤詩織さん。左は山口元一弁護士
#MeToo運動の一方で、誹謗中傷の広がりも
会見で伊藤さんは、#MeToo運動がSNS上でも広がったのと同時に、声を挙げるひとたちを攻撃するような動きも拡散されている課題も挙げた。またオンラインハラスメントやストーキングについて、伊藤さんは「ひとつひとつの言葉に対して、真正面から向き合うことは、正直辛くて、意味があることかも分からず、(投稿を)見なければいい」とも思ったが、その言葉が消えずに拡散されていく現実に「アクションを起こさなければ」と感じていたという。
さらに、5月末の木村花さんの急死のニュースを受け、「本当にショックで、スピード感を持って訴訟をスタートすることになりました」と明かした。「見えない相手なのに、時に死に追い詰めてしまうほど言葉の力は大きい。オフラインでも本人に面と向かって、責任を持って言えることか考えてから発信してほしい」と訴える。
誹謗中傷を受けた際の心理的・精神的なケアについては、「性被害を受けた時も感じましたが、日本ではケアを安心して受けられる体制ではありません。イギリスではオンライン上のハラスメントについて精神的ケアのサポートがあります」と指摘した。
伊藤さんのネット上の誹謗中傷を巡っては、評論家の荻上チキさんら5人のリサーチチームに依頼して調査をした。ツイッターに限らず、さまざまなSNSやブログ、インターネット掲示板などで、伊藤さんに言及した投稿は約70万件、このうちツイッターは約21万件あり、中でも悪質性の高いものに訴訟対象を絞ったという。また、今回はツイートを訴訟の対象としたが、今後は他の各プラットフォームを対象にどのように責任を問えるのか、法的措置を検討していく。