リアルとオンラインの融合の限界。原因は「空気感」?
教授たちは一方的な授業になってしまわないようにかなり気をつけているようだが、実は上手くいっている事例は一部にしか過ぎない。オンライン授業に切り替わって以来、授業のコンテンツに対する学生たちの不満と懸念の声は高まっている。彼ら彼女らがもっとも残念がっている点は、空間を共有することによって生まれる空気感を味わえないことだ。
筆者のクラスメイトは次のように不満を吐露した。「同じ教室の中で相手の顔を見ながらディスカッションをすることの大切さを味わった。リーダーシップについて考えるクラスでは、やはり限界を感じた。いくら論理的にリーダーのあるべき姿や傾向を文書や講義から学んでも、オンラインでできることは限られている。実践的スキルを磨く授業だったゆえ、物足りない感情がぬぐいきれない」
オンライン上で生まれる空気感は、オフラインとどのように違うのだろうか。これが解決できると、今後授業だけでなく、ビジネスシーンでも出張を要する会議なども削減できるのではないだろうか。
空気感による欠点は、コミュニケーションにある。この点について、スペインの大学生は次のように指摘した。「授業で一番大切なインプットとアウトプットがしにくい。発言のタイミングが見計らいにくく、待っているうちに思っていたことを発信するタイミングを失ってしまう。接続が悪く、普段伝わることが伝えられない時はやるせない気持ちになる。また、オンライン上では相手の反応から得られる感触が掴みにくい。大体の相手の表情は電波が邪魔せず、画面さえクリアであればオンラインでも読み取れる。でもコミュニケーションは、表情だけでなく相手や空間が放つ空気感も大きく関連している。オンラインではそれが難しいため、いくら論理的なディスカッションができたとしても、その先がないからもどかしい」
オンライン授業のクオリティを落とす原因の根幹にはコミュニケーション不足があった。五感を使った生のコミュニケーションで得られる「感触」がオンラインでは感じられないように思える。実際にビジネスシーンでも、会議や交渉の際は相手の眼差しや間で相手の本心や感触を読みながら進める。画面越しではこれらの部分が再現されづらい。
教育ではアウトプットが重要視されているが、これは「個」を造り多様性を受け入れる大切な過程だからだと実感した。学びを自分の中に取り入れ、それぞれが持つ価値観に照らし合わせて消化する。次にそこから生まれた考えを自分の言葉でシェアする、この一通りのプロセスがいかに学びにおいて貴重であるか、不足している現状だからこそ痛感した。それぞれの価値観がぶつかりあったり、うまく融合してシナジーを生み出したりする熱い瞬間が、コロナショック以来体感できていないもどかしさがある。