感染のほぼすべてが屋内で
4月7日に中国東南大学が発表した研究は興味深い。彼らは記録が残っている7324例の感染者の感染状況を調べたところ、屋外で感染したのはわずかに1例だった。感染のほぼすべてが屋内で起こっていた。
これは、日本におけるクラスターがもっぱら屋内で起こっていることとも合致する。表1は、3月31日現在、厚労省が発表したクラスター一覧だ。26のクラスターすべてが屋内で発生している。16のクラスターは医療・福祉施設で、残りの10はライブバー、展示会、飲食店、スポーツジムなど利用者がお互いに何らかの会話をするものばかりだ。
表1
唾液に含まれるウイルスは、屋内では長時間にわたって空中を漂うが、屋外ではすぐに希釈されるのであろう。屋外での活動は、やり方次第では安全に再開できるかもしれない。
5月7日には、ドイツのサッカーのブンデスリーガが、5月16日から無観客で再開すると発表した。感染リスクが低いと判断したためだろう。5月20日に夏の高校野球を中止した日本とは対照的だ。なぜ、無観客で開催しなかったのだろうか。
現在、世界中の研究者が、このような形でのプロスポーツの開催が、集団感染を引き起こすか否か、興味をもって見守っている。これも臨床研究のテーマなのだ。論文として発表することで、部外者が批判的に吟味することができる。臨床研究こそ、新型コロナウイルス対策の妥当性を評価する手段なのだ。エビデンスに基づく政策決定にも欠かせない。
日本の新型コロナウイルス対策は「三密」「日本型モデル」など、論文で検証されていないスローガンがひとり歩きしている感がある。対策のあり方は今後も検証していく必要があるのではないか。