甲子園は中止、プロ野球は再開へ。スポーツ危機にこそ新しい観戦方法を

昨夏の阪神甲子園球場。今年は春夏ともに甲子園大会は中止となった (Shutterstock)

昨夏の阪神甲子園球場。今年は春夏ともに甲子園大会は中止となった (Shutterstock)

春に続き、夏の甲子園大会もついに中止となった一方で、プロ野球は6月19日に開幕戦を迎える。

東京五輪が暫定的に2021年へ延期となり、各種スポーツの開催も取り止めとなる中、「夏の風物詩」全国高等学校野球選手権大会のみの決行は非常に難しい。個人的には、選手のためにも無観客試合で遂行を進言したいところだが、春と異なり各都道府県代表選出のため予選大会が不可欠である点を考慮すると無理からぬ決断だ。12球団だけを管理すれば済む、自己責任がまかり通るプロ野球とは事情が異なる。

入場料収入が大きな収益の柱のスポーツ界


先に中止が決定していた春の選抜による経済的損失は、関西大学・宮本勝浩名誉教授の試算によると約289億7005万円。単純計算すると春夏合わせざっと600億円の損失にものぼり、今後も有形無形に影響が長引くと想定される。出場校が決定していた「春」大会こそ、無観客で決行するほうが現実的だったかもしれない。

新型コロナウイルスの影響による「緊急事態宣言」は解除され、日常生活が少しずつ戻って来ると期待されてはいるものの、スポーツにも常日頃の様相が帰って来るのか、今後も難しい判断を迫られるだろう。

世界的にも経済活動が再開され始めたが、新型コロナウイルスの特効薬が開発されたわけでも、集団免疫を獲得したわけでもない。しばらくは「新しい生活様式」を実践し、あくまで感染防止に努める生活を強いられる。

そんな折、スポーツはどうあるべきなのか。プロ野球が方針を打ち出している通り、今しばらくは無観客による試合運用が現実的だ。だが、入場料収入が大きな収益の柱となっているスポーツ界において、赤字続きでもリーグ運営を継続するかと問われると、難易度は高い。早急に入場料に変わる収入を創り出す必要性に迫られる。

2020年の5G時代到来に向け、新しいスポーツの「見せ方」については各通信会社、IT企業とも考察を重ねて来た。AR/VR/360°ビュー、「新体感」と名付けられた観戦手法を編み出すたびに立ちはだかって来たのは「LIVE観戦を上回ることができるのか」という課題。観客は生観戦と新体感、どちらを選ぶのか。LIVE観戦に勝る体験を提供することができるのか......。

LIVE観戦のオルタナティブはすでに市民権を得ている。既存のテレビ観戦が代表であり、スポーツバーでの観戦なども極めて一般的だ。しかし2次元の画面から得られる体験は、生の観戦と置き換えるまでには至らない。そこで5Gを駆使した各種ソリューションにより、LIVEに劣らないリアルな臨場感を供給はこれまでも模索されて来た。Bリーグのオールスターにおけるパブリック・ビューイングなどもそのひとつの形だ。
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文=松永裕司

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