甲子園は中止、プロ野球は再開へ。スポーツ危機にこそ新しい観戦方法を

昨夏の阪神甲子園球場。今年は春夏ともに甲子園大会は中止となった (Shutterstock)

「デジタル・スタジアム」や5G活用で新体感


Jリーグは2019年5月12日、東京・大手町のビル内ホールに「デジタル・スタジアム」を設け、17メートル×4メートルの4Kの大画面映像に加え26台のドルビースピーカーにより臨場感たっぷりのパブリック・ビューイングを、ヴィッセル神戸対鹿島アントラーズ戦にて提供。これには約400人の観客が集まり、「メイン・スタンドから観ているようだった」とその躍動感に満足するファンもいれば、「子ども連れでも安心」と屋内での利便性を評価するファミリーも、さらにヴィッセル・サポーターからは「神戸まで足を運ばずとも迫力満点の試合を観戦できた」と概ね好評だった。
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ウイルス感染の危険性を考慮すると、数万人が集うスタジアムで大声を張り上げ観戦するよりも、オープンエアの公園などにこうした機材を配置し、ソーシャル・ディスタンスを保ちながら、和気あいあいと観戦する手段は、選択肢のひとつだろう。


渋谷ヒカリエで行われた5Gを活用したサッカー観戦のイベント

またNTTドコモは2018年7月、渋谷ヒカリエにて「新体感」観戦方法を提言。サッカー元イタリア代表のアレッサンドロ・デル・ピエロ、アンドレア・ピルロを招聘、有明にて行われた彼らのフットサル試合を、「5G」を活用しヒカリエのホールにLIVE伝送。ひとつのホールでは高解像度映像でほぼ実物大のピッチを投影するパブリック・ビューイングを実施。もう一方のホールには、疑似ピッチを設け、そのピッチ上に選手の動き、ボールの軌跡などのスタッツ・データを可視化し投影。プレーヤーのポジショニング、スピード、さらにボールの動きが映し出されるため、観戦者がフロアに立つと、試合中のピッチ上に身を起き観戦しているかのような新しい体験を提供した。
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これほどの規模ともなると予算感も膨らむためすぐさま商用化は難しい。しかし、これまで模索されて来たように現在のAR/VRなどの先端技術で臨場感を補えば、各家庭での観戦も新体感スポーツ観戦となりえる。

例えば甲子園の現場に多アングル・カメラを配置し、単なるテレビ観戦とは異なる、様々な角度からのXR観戦を、LIVE観戦のオルタナティブとして有料で提供、無観客試合では得られない入場料収入の補完とするのは、現実的だ。ホームプレート周囲に360°カメラが設置できれば、ホームプレート上の際どいプレーも、自宅にいながら検証できる。この360°ビューは実際、2017年のプロ野球オールスター戦にて地上波テレビにも配信された。また、ストライクゾーンを把握できるような、いわゆる「野村克也スコープ」をVRで投影することで、バーチャルな新しい楽しみ方も提供できる。
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文=松永裕司

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