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2020.06.23

アウトドア業界の下町ロケット。町工場発の「SOTO」の炎が世界に認められるワケ

最近、過去の名作映画やドラマをまとめて見返している方も多いだろう。「まあ、こんな話はドラマの世界だけのことだよなあ」なんて思っていないだろうか。

実はアウトドア業界にも、ドラマのような話は山ほどある。『下町ロケット』よろしく、町工場からスタートして世界規模まで成長したブランドは少なくないのだ。

アウトドア用の燃焼器具や調理道具を扱う「SOTO」は、その代表格。キャンプでお世話になっている方も多いであろう彼らの製品、じつは今も昔も変わらず、愛知県の工業用地の一角で作られ続けていることはあまり知られていない。

アウトドアとはまったく縁のない会社としてスタート



30数年前、当時本社工場にて商品の配送に追われるスタッフ。

「SOTO」の母体である「新富士バーナー」の設立は、1978年まで遡る。

会社を立ち上げたのは、営業マンとして30年近くバーナー業界を飛び回っていた現会長の山本 始。初めは工業用バーナーの製造会社として、愛知県蒲郡市で産声を上げた。


左は配管工事に使うガソリントーチランプ。草焼きバーナーを背負うカタログ用の写真はゴーストバスターズのよう。

設立当初は、配管工事用のガソリントーチランプや雑草処理に使う草焼き灯油バーナー、道路舗装工事などで目にするプロパンバーナーが主力商品だった。

当時の主な顧客は一般層ではなく、工場や工事業者。つまり、そこに現在我々が手にしているようなアウトドア用の小型バーナーや調理道具は、影も形もなかった。

しかし、あるひとつの商品が会社の未来を大きく変えていくことになる。


後ろに写る人の背中には「砥石」の文字。ゴリゴリの工業製品の展示会での1枚。

口コミの力から、アウトドアブランド「SOTO」が生まれた





欧米の「アウトドア」に対し、日本の「外」に合った製品作りを目指すことからブランド名が付けられた。

アウトドア製品を手掛けたのは、1990年に小型耐風バーナー「ポケトーチ」を開発したことに端を発している。

この製品は、そもそもハンダ付けや配線コードを束ねるチューブの加熱加工用に開発された。しかし、耐風性の高さを生かし、焚き火の火種や線香の着火に使うキャンパーがじわじわと増加。予想もしていなかったが、彼らの口コミにより、ポケトーチはキャンプ道具として認知を広めていった。


100円ライターを燃料にする手のひらサイズのポケトーチに続き、ランタンやストーブなどを展開する「G’zシリーズ」もヒット。
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取材・文=池田 圭 写真=矢島慎一

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