「外回りさん」に快適な夏マスクを。わずか3週間で開発した町工場の三代目社長の意地

吸湿・放湿性に優れた天然繊維のシルクを使用。汗をかいても熱や湿気がこもりにくくなっている

愛知県西尾市吉良町のニット工場「石川メリヤス」は、わずか3週間で完全無縫製のニット製プリーツマスクを開発した。その背景には、自社の外回り担当社員の声があった。


はじめまして。石川メリヤス有限会社で社長をしている大宮裕美と申します。石川メリヤスは愛知県西尾市の吉良町という小さな町にあるニット工場です。1957年に祖父が創業し、2016年に父から私が引き継ぎました。

従業員数は30名弱。いわゆる町工場です。作業用手袋を主力にしつつ、ニット小物ならば「何でも」作れる気概のある従業員が揃っており、多品種小ロット生産で全国の取引先とお付き合いをさせていただいています。

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三代目社長の大宮裕美です。「メーカーの基本は何よりも品質」が口癖だった祖父の想いを大事にしています

外回りさんたちが自社製品のマスクを着けてくれない! 理由は「暑いし息苦しい」


先日、私が少しショックを受けた出来事がありました。新型コロナウイルス感染拡大予防の需要に応えて当社でもニットマスクを開発し、お客様には「着け心地がいい」と好評をいただいています。

しかし、当社の女性従業員4人からなる外回り部隊(作業用手袋の縫製工程などを担う内職さんを回る仕事)が自社製品を使わずに、自作の「大臣マスク」などを着けていることに気づいたのです。理由を聞くと、季節が夏に向かう時期、外で体を動かして働いていると「暑いし息苦しい」とのこと。

使う人のメリットを第一に考えて、嘘のない商品を作ることが私たちの誇りです。そのためには、自分たちが「これはいい! 毎日でも使いたい」と思える商品でなければなりません。

私は夏場でも涼しくて息苦しくなく、なおかつ肌触りの良いマスクの開発を決意しました。リーダーたちを招集し「マスク会議」を開いたのは、5月27日のことです。

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企画、営業、生産などの各リーダーが会議室に集い、忌憚なく意見交換をしました

完全無縫製のプリーツマスクを作りたい。ヒントは自社製品のスヌードにあった


顔とマスクの間に空間を作ることで息苦しさを解消するためには、一般的な使い捨てマスクのようにプリーツ構造にするのが理にかなっています。ニット生地でも折りたたんでひだを作り、両サイドを折り曲げて縫製すればプリーツを作ることは可能です。

しかし、工程が増えることはコストと価格の上昇を意味します。また、縫った部分が肌に当たると跡がついたり痛くなったりしてしまいかねません。
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PR TIMES STORYより

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