コロナ禍で生まれた“日本流”
オペレーターの在宅勤務化は、技術の問題ではなく、導入するにあたってやるべきこと、考えておくべきことが無数にある。しかし、少子高齢化で人材確保が難しいなか、今回のような騒動の如何に関わらず、在宅勤務という選択肢を持っておくことは企業にとっても重要なことだ。
「コールセンターはいまやライフラインと言えます。ホームページだけではわからないときの最後の砦ですから。また、企業とお客さまの接点は、対面チャネルよりも非対面チャネルのほうが圧倒的に多い時代でもあり、ますます大事な部署となるでしょう」
オペレーターの在宅勤務化は、withコロナも見据えたうえでの経営判断が必要だということだ。
「新型コロナの話でいえば、日本はまだ比較的感染者数や死者数が少ないですが、深刻な国では在宅化するしか方法がなかった場合もあります。例えば弊社のシステムを使っているドイツテレコムでは、数千人規模のオペレーターを在宅にしました」
そして、日本ならではの新しい動きも生まれてきているという。
「サテライト型小規模センターをつくり、3密の感染リスクを避けた状態で対応する動きが出てきています。コールセンターと在宅勤務の中間形態ですね。そのように、いま企業さまはいろいろな知恵を絞りながら対応されています」
アバイアが提供するアプリケーションには以下のような特徴がある。そして現在、問い合わせのほとんどがリモートワークに関することだという。
・H.323、SIP*をサポートする低リソースのアプリケーションが、在宅の業務を可能にする
・画面のUIを変更できるので、使用する側にとってはよりストレスを軽減できる
・デスクの電話はもちろん、ソフトフォン(パソコン上での電話)以外にもスマートフォンに対応するなど、用途の柔軟性が高い
*H323|音声と動画通信のためのプロトコル(通信手順)。ネットワーク上でリアルタイム通信を可能にする標準規格。 SIP|次代の標準とされる、音声、映像、テキストをやりとりするプロトコル。暗号化にも強く、多くのアプリケーションで採り入れられている。
今回の新型コロナ騒動で、和智氏が改めて実感したこととは何だったのだろうか。
「平時と非常時で、オペレーションをどう切り替えるのか? そこはあらかじめ準備なり、トレーニングなりをしていないとかなり難しいということ。ここ数年、地震や台風といった災害対策は考えていました。しかし、それはあくまでも局所的な話です。今回のように全国規模、全世界規模での疫病対策というのは、さすがに想定しきれていませんでした。今後は、大きく発想を変えた対策が必要だと考えています」
では、withコロナ、アフターコロナにおいて、コールセンターはどう変わるのだろうか。
「日本では、人材確保が困難になりつつあることもあり、AIの活用は促進されていくと思います。すでにチャットのボット機能では採用されていますが、これを機に、人がこれない状況でAIがどこまでできるのかという研究は進むと思います。また、これもすでに始まっていますが、AIを使ったオペレーターへのトレーニング機能も進むでしょう。在宅勤務に関しては、私個人の考えでいえば、この先いっきに進むというよりも、選択肢のひとつとして広がると考えています。しかし、時代の進化は早いので在宅勤務が常識になる未来も否定できません」
コールセンターの問題のみならず、新型コロナの感染発生報告がFAXのみであったり、教育現場ではオンライン授業の遅れなど、今回の騒動で日本の問題点が続出した。しかし、ときにはオンラインが全滅するトラブルも起こり得るだろう。万能なものなどこの世にはない。改めて、「備えあれば憂いなし」という故事が身に沁みる状況になっている。
しかし、どこまでのことを想定するのか、そこに向けた人員と予算を平時にどこまでかけるのか、こればかりは答えのない難しい問題といえる。