金融業界も「SDGs化」、パンデミック債も|シリコンビーチから見るコロナ後経済

Getty Images


レオナルド・ディカプリオも投資する「オールバーズ」


「オールバーズ」という靴メーカーがある。創業者は元プロサッカー選手のティム・ブラウン氏とバイオテクノロジーの専門家ジョーイ・ズウィリンジャー氏。「羽毛のように軽い」がウリで、アメリカのタイム誌では「世界でもっとも快適な靴」に選ばれた。

石油由来の化学製品をなるべく排除した製品をつくることを目標にし、素材には徹底的にこだわっている。靴底は再生可能プラスチック。靴ひもはペットボトルからのリサイクル。素材はブラウン氏の出身地ニュージーランドのメリノウールとユーカリの木の繊維。梱包材は90%リサイクル段ボール。

null
「オールバーズ」の靴(Getty Images)

製品が生産から店頭に並ぶまでの工程でどれだけ二酸化炭素を生み出し、大気中に排出しているかの指標に「カーボンフットプリント」というものがある。通常の靴はこれが12.5キログラム程度なのに対し、オールバーズの靴は平均7.6キログラム。半分近く少ないが、オールバーズでは最終的にはこの数字をゼロにまで減らすという。

この姿勢がミレニアル世代に受けたのだろう。シリコンバレーで人気に火がつき、フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグ氏やグーグル共同創業者のラリー・ペイジ氏などの著名人も好んではいているという。環境にいいものを身に着けることこそがおしゃれであり、トレンドだからである環境活動家としても知られるレオナルド・ディカプリオ氏は同社に投資をしている。

拡散されるのは「モノ」情報でなく「ストーリー」


「今までは、『安くていいもの』がもてはやされる時代でした。前のモデルにくらべて、いかにスペックがよくなったか? 値段が安くなったか? がアピールポイントの大半を占めていたのです。でも、今は、それよりも『創業者がこの製品をどういう思いでつくり上げたのか? いかに地球環境にやさしいか? といった“ストーリー”が重視されます。

ものづくりの『バックグラウンド』を知り、その世界観に賛同した人たちはたとえ値段が多少高くても買い求めるのです。この一連のストーリーが消費者に伝わるようになったのは、なんと言ってもSNSの力が大きいです。SNSは世界観の表現に向いているメディア。ものは拡散されないけれど、ストーリー(感動体験)は広く拡散されるのです」

かつては、お金持ちや成功者になったらグッチやルイ・ヴィトンなどのハイブランドに身を包み、フェラーリやベンツなどの高級車に乗ることがひとつのステイタスだったが、今は違う。オールバーズの靴をはき、自然にやさしい天然素材の服を着る。テスラなどのエコカーに乗る。オーガニックな食品を選び、フィットネスやYOGAで汗を流すことが、ミレニアル世代にとってのかっこいいライフスタイルなのである。
次ページ > カップ麺より手打ちうどん

構成・文=柴田恵理 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事