金融業界も「SDGs化」、パンデミック債も|シリコンビーチから見るコロナ後経済

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「『地球を大事にする』ことこそが彼らの価値観になっているのです。それに即していない企業は受け入れられません。『このブランドの商品がほしい』から『この創業者が情熱を持ってつくった商品がほしい』へと変化してきています。ファンをつくることこそが企業にとって重要で、ファンこそ最高の資産と考えるようになっているのです」と世野氏。企業に対しても、環境や社会的貢献度、人の役に立つものを求める傾向にあるのだ。

「そういう点から、大企業に対するミレニアル世代のイメージは総じてあまりよくありません。『大企業がつくったもの=大量生産の工業製品』という印象を抱いています。発展途上国の安い労働力と劣悪な環境下で子どもたちをこき使い、汚染を垂れ流し、人の身体にいいかどうかに関係なく、安い材料を使って粗悪品をつくり出している、というイメージを持っているからです。

食べ物に例えるなら、工場で大量生産されるカップ麺と少量ながらも素材を吟味し、丹精込めてつくられる手打ちうどんの違いです。大量生産された製品からは創業者の思いや情熱が伝わりにくいのは明白です」

依然、大企業に憧れを抱き、新卒生の人気企業ランキングでは上場企業が上位を占める日本では到底考えられない。大企業に対するイメージがこんなにも違うのだ。

「世の中の風潮として、『誰かのために』『環境のために』『社会的貢献度が高い』などがないと評価されない時代になっています。たとえば、海外でものを売ろうと考えたとき、商品に再生可能プラスチック以外を使っていたら、今後は苦戦するかもしれません。商売に限らず、どの分野においても、この感覚がわかっていないと受け入れられづらいでしょう」

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今年3月、コロナ禍の裏で、農家に原則として「自家増殖」を禁じ、企業などから種や苗を買うよう定める『種苗法の改正』が発表され、女優の柴咲コウ氏がツイッターで異論を唱えるなどでも話題になった。今国会では成立が見送られたが、依然予断は許されない。

この改正案が成立すると、イチゴの「あまおう」や米の「つや姫」をはじめとする約8000種の種子や苗が登録制になる。栽培した種をとってまいたり、株分けしてふたたび植えたりすることができなくなる。

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農林水産省によれば「登録品種は種子全体の5%にすぎない」そうだが、在来種だと思って育てていたものが、調べてみたら実は登録品種だったケースも数多くあるという。違反すると10年以下の懲役か1000万円以下の罰金が課される。

イチゴやみかん、リンゴ、芋などはこれまで自家増殖をしてきたし、米や麦、大豆などは購入した登録品種を数年間自家採種してきたがそれができなくなる。登録品種を使用するには、毎年500万円近くもの使用料を支払う必要があるし、新たに育種登録するにも数百万円から数千万円もの費用がかかる。どちらを向いても農家の負担が増えることは間違いない。

そして、それらの費用は作物に上乗せされることは必至だろう。我々の家計にも影響してくるということだ。さらに、育種登録さえできれば日本で流通可能なことから、さまざまな「操作」を施された作物が海外から入ってくる可能性がある、ということでもある。
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構成・文=柴田恵理 編集=石井節子

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